欧州委、牛乳・乳製品に関する制度の簡素化を提案


 欧州委員会は2月15日、市場の統一を図るための共通市場制度(Common Market Organisations:CMO)の牛乳・乳製品分野での簡素化を目的とした政策パッケージ案を提案した。今回の制度改正により、行政手続きなどの簡素化が図られるとともに、バターや脱脂粉乳の輸出の減少により結果として年間最大で2,240万ユーロ(約35億円:1ユーロ=158円)の予算削減効果が期待できると欧州委員会では試算している。


粉乳・れん乳中のたんぱく質含有率基準の国際基準への変更

 EUの酪農業界および粉乳・れん乳の輸出業者は、これまで粉乳・れん乳中のたんぱく質含有率について、国際規格であるコーデックス規格と同じ34%とすることを要求していた。現在の粉乳に含まれるたんぱく質の含有率は31〜37%であるが、これを域外の製品と同等の34%とすることにより国際競争力が高まることが期待される。

 なお、現在の規則では、脱脂粉乳の介入価格は、たんぱく質含有率が35.6%の製品を基準として設定しており、これが1%下がるごとに介入価格を1.75%低減することとなっている。今回の国際基準への変更により、たんぱく質含有率の設定が1.6ポイント引き下がるため、介入価格は2.8%(1.6%×1.75)引き下げられる。


バターの買入制度の簡素化

 現在のバターの介入買入制度は、バターの市場価格が介入価格の92%を2週間にわたって下回った場合に買い入れを行い、これが2週間にわたって上回った場合に中止することとなっている。これを、行政手続きの簡素化の観点から廃止する。今回の提案では、介入買入機関が3月1日〜8月31日の間、市場価格が介入価格の90%を下回った時点で買い入れを行い、域内全体で限度数量(2008年は3万トン)に到達した時点で買い入れを終了する。


バターの規格の統一

 95年以降、バターの介入買入制度について、域内共通の品質規格が規定されているものの、非常に厳格で、またその確認が困難であった。このため、加盟国によってはそれぞれ異なる特例が適用され、この結果、制度の対象となる品質規格が異なるものとなっていた。今回、この域内共通の品質規格の水準を緩和し、全加盟国で導入できるものに変更する。


脱脂粉乳などの民間在庫補助の廃止

 現在、クリームや脱脂粉乳については、市場価格の安定を図るために民間在庫補助制度が規定されているが、これはほとんど機能していないことから廃止する。また、軍隊用のバターの買入助成制度についても廃止する。


学校向け牛乳助成の統一単価の導入

 現在の学校向け牛乳助成制度は、非常に複雑な助成単価の設定となっていることから、これを簡素化し、提供する牛乳・乳製品の種類に関係なく、助成単価を統一する。


牛乳・乳製品の輸入に係る輸入ライセンスの廃止

 牛乳・乳製品の輸入については、輸入枠の管理のため、輸入ライセンスの取得と許可数量の全量輸入が義務付けられている。しかし、新たな輸入監視システムでは、枠の消化状況について、正確で透明性の高い最新情報を関係者に提供することが可能なことから、輸入ライセンスに基づく輸入義務を廃止する。


飲用乳の区分適用の緩和

 現在、域内で生産および販売できる飲用乳の区分は、(1)脱脂乳(脂肪率0.5%以下)、(2)部分脱脂乳(脂肪率1.5〜1.8%)、(3)全乳(脂肪率3.5%以上)となっている。

 近年の食習慣の変化や市場のニーズに応じた生産を目的として、脂肪率を明示する場合には、前述の3区分以外での飲用乳の生産・販売を認める。なお、この場合は、商品名として脱脂粉乳、部分脱脂乳または全乳との表示は使えない。


今回の改正に伴う予算削減効果

 欧州委員会では、今回の脱脂粉乳のたんぱく質含有率を34%に変更することに伴い、脱脂粉乳の生産が一時的にわずかに増加するが、基準を上回るたんぱく質についてはチーズ生産などに利用されると見込んでいる。チーズなどの生産では乳脂肪も多く利用されることから、このことによりバター(および脱脂粉乳)の生産および輸出の減少につながっていき、その結果、バターおよび脱脂粉乳の輸出補助金支出額が削減されると試算している。

今回の制度改正による輸出補助金の削減額の試算


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