恒常的な生産過剰に業界は生産抑制を計画
タイにおいては、従前より鶏卵の生産過剰が続いており、現在も週当たりの国内需要が2千5百万個に対して、2千7百〜2千8百万個の生産が行われているとされている。そのため、1個当たりの生産コストが2バーツ(7.2円:1バーツ=3.6円)に対して生産者の販売価格が1.8バーツ(6.5円)となっており、収益が見込めない状態となっている。このため、国家鶏卵委員会(NEBC)は、生産者に対して次のような生産抑制策への協力を要請している。(1)採卵鶏を減らすため、10週間以内にひな鳥のふ化羽数を10%減少させる。(2)市場の需要に合わせるため、生後70週以上の採卵鶏をとうたし、現在の3千6百万羽から2千4百万羽に減らす。(3)種鶏の輸入羽数を4〜5%減少させ、来年の生産抑制につなげる。
鶏卵輸出の主要市場は香港
以上のようにタイの鶏卵生産者は、生産調整を行うことを計画しているが、これを実際に実行に移すことは容易でなく、これまでも余剰が発生し、その一部は輸出に仕向けられて来た。近年の輸出実績は表の通りであり、タイにおいて鳥インフルエンザ(AI)発生以前の2003年には2億3百万個を輸出していたが、AIが発生した2004年にはその4分の1まで減少したが、その後2005年には1億個を超えるまで回復し、2006年には1億8千4百万個と急激に増加している。これと並行して輸出先としての香港のシェアは、2003年には約5割であったものが2004年には約9割となり、2005年には7割台と下がったものの、2006年には9割を超え、タイ産鶏卵の輸出市場として香港は近年その重要性を増している。
香港への輸出の拡大計画
2月初旬にタイ商務省輸出振興局(DEP)の香港事務所が、本国の商務省に対して、香港当局が鶏卵の輸入に際しての規則を強化するとの報告を行ったとされている。これは、香港の鶏卵輸入業者は食品安全センター(CFS)に登録を行い、事前に輸入同意証明書の発給を受ける必要があるというものである。これに対してタイの鶏卵輸出業者の団体は、既にタイからの鶏卵輸出については、農業協同組合省畜産開発局(DLD)から衛生証明が出される体制になっており、特に問題はないとしている。また、2007年には2006年の輸出実績を上回る2億個の輸出を目指すとしている。特に香港市場に対しては、競合するEUでのAI発生が、タイからの輸出の追い風になるものと見込んでいる。
厳しい収益の確保
一方、輸出単価の推移(FOB)を見ると、バーツ高が進行しているためでもあるが、2004年以降低下している。また一方では、主たる飼料原料のトウモロコシ価格や原油価格などが上昇しており、コスト高が避けられない状況となっている。鶏卵輸出業界によれば、今年の第1四半期の輸出価格は鶏卵1個当たり1.6〜1.7バーツ(5.8〜6.1円)としており、昨年をやや上回るとしているが、依然として生産コストを下回る厳しい状況となっている。
タイの鶏卵輸出
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