米国のジョハンズ農務長官は2月2日、全国肉用牛生産者・牛肉協会(NCBA)をはじめとする肉用牛関係団体が共催した年次総会において講演し、1月31日に米国農務省(USDA)が公表した2007年農業法提案において畜産農家の関心の高い環境保全事業の予算増額を盛り込んだことを紹介、米国産牛肉の貿易については、輸出・輸入ともに国際基準に基づく措置を適用していくことが重要であるとの考えを明らかにした。
農業法提案ではエネルギー政策と環境保全を重視
同長官は、大統領が先の一般教書演説で述べたとおり代替可能エネルギーの推進は極めて重要だが、一方でトウモロコシ価格の高騰に畜産業界が懸念を抱いていることは大統領も十分認識しているとし、農業法提案ではセルロース・エタノールの増産に加え、飼料原料となる蒸留かす(DDGs)の品質および栄養成分の向上についても研究・開発支援を行うとした。また、環境保全事業のうち、特に肉用牛農家の利用が多い環境改善奨励事業(EQIP)の予算増額提案を紹介するとともに、土壌の保全という本来の目的に合致した形で事業の仕組みの単純化を図ると述べた。
科学に基づく国際基準に沿った牛肉貿易の重要性を強調
また、同長官は、韓国が昨年9月に米国産牛肉の輸入再開を決定したが実行を伴っていないと批判するとともに、この問題の解決のためにあらゆる手段を講じ決して諦めないと強い意欲を示した。同時に、カナダからの生体牛などの輸入再開に関する行政府提案に関し、業界内で異論があることは承知しているが貿易相手国に対して自国が望むのと同様の処遇を与えることが貿易における大原則であるとして、理解を求めた。
さらに、同長官は、貿易相手国も米国と同様の誠意を持った対応をするべきであると述べるとともに、国際獣疫事務局(OIE)における米国のリスク分類が確定して他国がこれに従うことを約束すれば、米国産牛肉の輸出拡大に向けての環境が整うだろうと述べた。
家畜の個体識別制度(NAIS)は任意制度での実効性確保を追求
最後に、同長官はNAISについて、行政府が正しいと考える方法を強制することは間違った進め方であり、任意の枠組みで個体識別制度の実効を確保していくほうがより現実的な解決策であると述べ、会議参加者にNAISにおける生産施設の早期登録を行うよう呼びかけた。なお、前日に行われたUSDAのナイト次官の講演においては、肉用牛農家における生産施設の登録割合は1月末段階で25%しかなく、実効性を確保するためにも早期の全施設登録が重要であるとされた。
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