米国の酪農生産者、自主基金による生乳生産削減プログラムを実施


2005年以来4回目となる牛群とう汰プログラムを実施

 米国において酪農家の拠出金により運営される酪農協共同基金(Cooperative Working Together:CWT)は2月6日、2005年以来4回目となる「牛群とう汰プログラム」を実施することを公表した。

 CWTは、2003年7月に設立された生産者自らの出資による基金団体であり、生乳の需給バランスを安定させるための事業を通じて、生産者乳価の上昇を図ることを目的としている。この基金の管理運営は、全国生乳生産者連盟(NMPF)が主体となって行うものの、NMPFの非会員である酪農協や生産者についても、同額の拠出金(生乳100ポンド当たり10セント)を支出することによりCWTへの参加が可能となっている。

 今回公表された「牛群とう汰プログラム」は、搾乳牛のとう汰により生乳生産量を削減する事業である。この事業は、これまで2003〜2005年の間に3回実施され、合計で14万7千頭以上の搾乳牛をとう汰することにより、28億ポンド相当の生乳生産を削減してきた。


生産者販売価格は上昇基調も、飼料コストの急騰による経営悪化が影響

 米国における生乳の生産者販売価格は2005年末以降毎月、前年同月を10〜20%程度下回るなど低迷を続けてきたものの、2006年第4四半期以降はその減少幅も狭まり、2007年1月の平均価格は、前年同月比0.7%安の100ポンド当たり14.40ドル(キログラム当たり38円:1ドル=119円)と昨年とほぼ同水準になるなど上昇局面に転じている。

 一方、最近の生乳生産コストを見ると、地域によって違いはあるものの、飼料穀物価格の急騰などにより、前年に比べおおむね1割程度上昇している。米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が毎月公表する生乳/飼料比(生乳1ポンド当たりの販売収入で購入可能な酪農向け飼料の重量)は、2007年1月には、前年同月比26.2%減の2.34ポンドと大幅に減少している。

 このように、今回生産者自らが「牛群とう汰プログラム」を実施し、生乳需給の引き締めを通じて価格の上昇を図る背景には、これまでの3回とは異なり、生産者乳価の下落の影響というよりはむしろ生産コストの上昇による酪農経営の悪化が影響しているものと考えられる。


今回のとう汰は3月後半より順次開始の予定

 今回の「牛群とう汰プログラム」は、これまで実施された時と同様、特定の地域における生乳供給に悪影響を及ぼすことのないよう、全米を5つの地域に区分し、各地域ごとの生乳削減計画数量が定められた上、実施されることとなる。

 また、これまでの3回の事業に参加した生産者は、今回は参加することは出来ず、さらに、2カ所以上の農場を経営する生産者については、所有するすべての牛群について申請しなければならないこととされている。

 今後、この事業への承認申請は3月3日まで受付けられ、買上げが承認された牛群は、同19日以降に開始される農場における監査終了後、順次、とう汰のためと畜場へ出荷される予定である。なお、承認された牛群の生産者に対しては、CWTにより1年間分の生乳販売相当額が補償されることとなる。


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