欧州委員会は6月1日、動物由来の肉骨粉について、その原料となる動物の種類を特定することのできる科学的なたんぱく質の分析方法の確立のための研究を実施することを公表した。この研究の経費は170万ユーロ(2億8,390万円:1ユーロ=167円)とされている。
これは、2005年7月に承認されたTSE(伝達性海綿状脳症)対策の指針(Roadmap)に則って実施するものであり、この分析方法が確立されれば、動物性たんぱく質の飼料給与の禁止措置(フィードバン)の緩和につながるものと考えられる。
EUにおけるフィードバンの概要
EUでは、ほ乳動物由来のたんぱく質の反すう動物への給与の禁止措置は、94年7月に導入された。当初は、部分的な禁止措置であったが、2001年1月1日からは、さらに対象を拡大し、現在は、反すう動物以外および若齢の反すう動物用飼料としての魚粉の利用を除き、すべての家畜向けの飼料への動物性たんぱく質の使用を禁止している。また、畜産副産物に関する規則においても、同じ種の中での再利用(いわゆる共食い)を全面的に禁止している。
2005年7月には、TSE対策指針(Roadmap)において、フィードバンに関しては、一定の条件が整えば対策を緩和するとしており、動物の種類を特定することができるたんぱく質の分析方法が開発されれば、反すう家畜でない家畜由来の肉骨粉を飼料として利用するとしている。
また、2006年12月には、いわゆる「TSE規則」を改正し、飼料中における動物性たんぱく質の混入については、偶発的であり、かつ、技術的に混入が避けられない場合は、わずかな量であればリスク評価に基づき設定する水準まではその混入を許容することとした。
TSE対策指針に則って実施する研究と強調
現在、大豆などの高たんぱく飼料原料の価格の高騰が続いていることから、農家が、この研究が成功した場合、動物由来肉骨粉を飼料に利用可能となるのではないかと期待感を強めている。一方、この研究の実施が「人間の健康」に対するリスク評価なしに行われようとしているとの一部報道について、欧州委員会は、この研究は全加盟国が合意したTSE対策指針に則って実施されるものであると強調しており、摂氏133度で熱処理した肉骨粉の原料の種類を特定することができる分析方法の確立が目的であるとしている。また、欧州委員会の最優先事項は「公共の健康の保持と食の安全の確保」であり、TSE対策指針で禁止となっているチキンミールの豚用飼料への利用、豚肉骨粉の家きん用飼料への利用については、確実に原料の種類を特定する検査方法の確立がされない限りその解除は難しいとしている。
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