ロシアは11の食肉処理施設に対し輸入認可を取り消し
ブラジル農務省(MAPA)は、6月11日に、ロシアに輸出される家畜および畜産物の流通管理を7月1日から厳格化することを発表した。
このきっかけはロシア政府が、2005年の口蹄疫発生によりロシア向け食肉輸出を禁止している州由来の牛肉を偽って輸出したなどとして、5月18日にブラジル国内の11の食肉処理施設に対して輸入認可を取り消す通知を発出したことによる(現在ロシア政府は56の食肉処理施設に対しロシア向け輸出を認可)。この通知を踏まえ、MAPAは6月8日から9日にかけ専門チームをロシアに派遣し、
(1) ブラジル政府は、ブラジル−ロシア間で締結された家畜および畜産物の流通管理に関する衛生条件を順守しており、国際衛生証明書(CSIs)を偽造して輸出しようとした積荷を取り押さえるなど、法令に基づく措置が的確に運用されていること
(2) 積荷の輸出先の変更などは頻繁に見られるものであるため、輸出手続きの中で行き違えがあったと考えられること
(3) 2007年5月末のOIE総会において、サンタカタリーナ州が口蹄疫ワクチン不接種清浄地域と認定されるなど、ブラジルの家畜衛生ステータスは高まっていること
をロシア政府に対し主張した。
ロシアはブラジルに対し、食肉の輸出管理の監視強化を要請
ロシアとブラジルの間で合意されたロシアに輸出される家畜および畜産物の流通管理の厳格化に関する措置内容は、以下のとおりである。
(1) ロシア政府が指摘したブラジル国内の11の食肉処理施設に対して、MAPAが調査を行うこと
(2) これまでロシア政府が検査してきた食肉処理施設の認定業務については、7月1日からMAPAに委任すること
(3) MAPAが認定する食肉処理施設に対し、定期的にロシア政府が検査を行うこと
(4) 7月1日からCSIsのデジタル認証制度(MAPAのホームページからCSIsの真正性を確認できる仕組み)を実施すること
(5) 7月1日から畜産物の一次梱包材にはと畜の段階からMAPA農牧防疫局の検査済シール(SIFシール)を貼付すること
(6) MAPAとロシア政府によってワーキンググループを結成し、今年の11月1日までにブラジル産畜産物のロシア向け輸出条件に関する覚書きを作成すること
ロシアの家畜衛生部門を担当する獣医植物衛生監視局アレクセンコ次長は「ロシアは牛肉の国内生産が国内需要を満たしていないため、ブラジル産牛肉を必要としている。ロシアはブラジルの一部の食肉処理施設からの輸入を禁止したが、ブラジルからすべての牛肉輸入を禁止するものではない。ロシアはブラジル政府に対し、輸出認可された牛肉のみを輸出してもらいたいと要請している。しかしブラジル政府が要望に応じられないのであれば、他の南米諸国からの輸入を検討することになるであろう」と述べている。
ロシア政府の通知の発出が伝えられた際、ブラジル関係者の中には、ロシアがブラジルからの食肉輸入を大幅に減らすことを心配する者もいる一方で、食肉価格の引き下げが狙いではないかとみる者もいた。しかしながらEUからも同様の点を指摘されていることから、コンプライアンス順守の徹底は火急の課題となっているとみられる。
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