全米豚肉ボード、PQAプラスプログラムの実施を公表
全米豚肉ボード(NPB)は6月7日、デモイン(アイオワ州)で開催された世界豚肉博覧会(全国豚肉生産者協議会(NPPC)主催)において、「豚肉品質保証プラス(PQAプラス)プログラム」の実施を公表した。
このPQAプラスは、NPBが現在、豚肉チェックオフ制度の一環として実施している「豚肉品質保証(PQA)プログラム」と「肉豚福祉保証(SWA)プログラム」を一本化したものである。この新たなプログラムでは、従来のプログラムの改善を図るため、(1)生産者教育、(2)肉豚を飼養する施設の評価、(3)第三者機関による査察―を強化することを主要な柱としている。また、このPQAプラスプログラムは、本年6月より利用可能となっている。
米国では86年以降、法律(「豚肉販売促進・調査研究法(Pork Promotion,Research,and Consumer Information
Act)」)に基づき、生産者や輸入業者などから生体豚または豚肉の販売額の一部を徴収し、これを原資に市場拡大のための販売促進や調査研究活動を行うチェックオフ制度が実施されている。現在の賦課金は、生体販売価格100ドル当たり40セントとなっている。
PQAプラスは家畜福祉に関する要素を拡充
NPBは89年、生産者教育の一環としてPQAプログラムを開発した。PQAプログラムは、レベル1〜3までの段階別に生産者を教育するシステムとなっている。レベル1〜2では、主に動物用医薬品の取り扱いと適正な使用方法の習得に重点を置いている。また、レベル3では豚肉の品質を保証するための基準が設けられており、このプログラムを完了した生産者は、3年間の「品質保証された」PQA認定を受けることとなる。
今回、新たに公表されたPQAプラスプログラムは、従来のPQAプログラムに家畜福祉に関する要素を盛り込んだものとなっており、以下の10項目を課題として示している。
(1) 効率的かつ効果的な家畜の健康管理計画の策定および実施
(2) 獣医師、生産者そして患畜の信頼関係(VCPR)に基づく医薬品の使用判断
(3) 抗生物質の責任ある利用
(4) 治療した家畜すべての識別および追跡
(5) 医薬品および治療に関する記録の保持
(6) すべての医薬品および薬用飼料の適切な保管、表示
(7) すべての家畜管理者に対する適切な投薬技術、注射使用方法、薬品投与回数の順守、食品として不適切な製品の市場流通の回避手段の教育
(8) 自家配合および市販飼料の配合手順の順守
(9) 家畜管理者教育プログラムの開発、実施および記録
(10) 肉豚の福祉向上のための適切な取り扱い
全米豚肉ボード、農場査察によるプログラムの信頼性向上を期待
一方、NPBは2003年、豚肉チェックオフ制度の一環として肉豚福祉保証(SWA)プログラムを導入した。これは、農場段階における肉豚の福祉に関し、生産者が自主的に評価することを目的とした最初のプログラムであった。また、2004年には、全国外食協議会と食品マーケティング協会が、すべての農場における家畜福祉に関する検査プログラムを開発した。しかし、当時、消費者の間ではSWAは信頼性に欠け、さらに、農場での検査プログラムの実施は困難なものと評価されていた。
このような中、NPBと米国農務省は2005年、家畜福祉の問題に対処するための計画を作成した。この計画に基づき2006年には、NPB、NPPC、食肉加工業者、外食産業、食品小売業者など食品業界すべての部門からの代表者により「豚肉産業家畜保護連合(Pork
Industry Animal Care Coalition)」が結成された。今回公表されたPQAプラスプログラムは、同連合の検討により開発されたものである。
NPBは、今回のPQAプラスプログラム実施の公表に当たり、米国における豚肉産業の課題は、生産者教育や施設の評価に焦点を当てた継続的なシステムの改善であるとした上で、今回の柱の一つである第三者機関による農場施設の査察により、同プログラムに対する信頼性を高めるとしている。
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