● ● ● 新たな局面を迎えたデンマークの豚肉輸出 ● ● ●
イギリス食肉家畜委員会(MLC)によると、2006年上半期のデンマークの豚肉輸出量(冷凍・冷蔵)は前年同期比8.5%増の60万6千トンと、かなりの程度増加した。MLCは、前年同期と比較して枝肉輸出がほとんど伸びなかったのに対し、加工度を進めた部分肉(カット肉)の割合は11.0%増加したとしており、特に、ほかのEU諸国に対する部分肉の輸出は17.0%の大幅増加になったとしている。
デンマークの豚肉輸出量の推移(1〜6月)
● ● ● ドイツ、ポーランドを中心に順調に伸びるEU域内向け輸出 ● ● ●
デンマークの豚肉輸出状況を地域別に見ると、EU25カ国向けは前年同期比14.0%増の40万トンとかなり大きく増加した。この中でもドイツ向けが同20.9%増の15万1千トン、ポーランド向けが同35.8%増の3万8千トンとそれぞれ大幅に増加したほか、イタリアも同12.7%増の6万6千トンとかなりの程度増加している。MLCは上位2カ国の増大の影響が特に大きいとしているが、ドイツについては今年の国内生産量の減少を補う形で増加したとする一方、ポーランドにおいては近年急速に国内需要が伸びていることが大幅増の要因としている。
なお、欧州委員会の報道などによれば、2004年にEUに加盟したポーランドをはじめとした中東欧諸国では設備投資が拡大するなど経済成長が続いていることから、今後もデンマークから同国への豚肉輸出は増加すると思われる。
● ● ● 前年同期比で4倍増と躍進が目立つロシア向け輸出 ● ● ●
一方、EU域外への2006年上半期の輸出量は前年同期並みの20万6千トンとなったが、従来から最も輸出が多い日本向けが前年同期比29.5%減の9万5千トンと大幅に減少した反面、これとは対照的にロシア向けが前年同期と比較して4倍強の5万7千トンと大幅に躍進した。それぞれがEU域外への輸出量全体に占める割合も大きく変化しており、日本向けが2005年の64.9%から2006年の46.2%へ20ポイント近く減少した反面、ロシア向けは同6.7%から27.5%へ逆に20ポイント以上の増加となっている。
ロシアの2006年前半の豚肉輸入については、それまでの主要な輸入先であったブラジルにおいて口蹄疫が発生したことから同国からの輸入が大きく落ち込んだ結果、デンマークからの輸入が大きく伸びた面がある。しかし、このような要因に加え、近年、原油や天然ガスといったエネルギー産業の拡大による購買力の高まりから、畜産物をはじめとした食料の輸入を増大させていると伝えられているが、こうした仕向け先別数量割合の構造変化は今後も続くものと思われる。
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