欧州委、家きん肉に係る新たな関税枠を設定


 欧州委員会は10月27日に、ブラジル政府との間で、また、11月28日にタイ政府との間で、EUが輸入する家きん肉の一部に対し新たな関税枠を設定すること、およびその関税枠内における税率や両国への配分数量について合意に達したことを公表した。


WTOのパネルでの敗訴を受けてのEU側の対応

 EUが輸入する冷凍鶏肉は、含まれる塩分濃度が重量比1.2%未満であれば、「冷凍鶏肉」として関税分類番号020714に分類され、関税は1トン当たり1,024ユーロ(約15万9千円:1ユーロ=155円)の従量税となっていた。一方、含まれる塩分濃度が重量比1.2%以上であれば「加塩鶏肉」として関税分類番号021039に分類され、関税率が15.4%の従価税となっていた。この「冷凍鶏肉」に係る従量税は、従価税に換算すると約50%に相当したことから、塩分濃度を1.2%以上に調製した「加塩鶏肉」での鶏肉輸入が急増した。EUの主な鶏肉輸入相手先はブラジルおよびタイであるが、両国からの「加塩鶏肉」の輸入は96年はゼロであったものが、2002年には約20万トンに急増している。

 このため、欧州委員会は2002年7月、低関税での鶏肉輸入の急増に対処するため、鶏肉に含まれる塩分濃度が重量比で1.2〜1.9%のものは関税率の高い「冷凍鶏肉」に分類することとした。この結果、「加塩鶏肉」の輸入は激減することとなった。

 ブラジルは2002年10月以降、タイは2003年3月以降、本件に関しEUと協議を行ったが進展が見られず、両国は世界貿易機関(WTO)に提訴を行った。2005年5月には、WTOの紛争解決機関(DSB)のパネルは、EUの措置がWTO協定に整合するものではないとのレポートを取りまとめ、DSBは同年9月27日、これを採択した。このため、これを受けEUは、塩分濃度の違いによる鶏肉の関税分類を2002年7月以前の分類に戻すことおよび新たな関税割当枠を設定することを決定していた。


家きん肉に係る新たな関税枠の概要

 今回、両国政府とは、GATT28条による譲許表の修正手続きにより、低関税の「加塩鶏肉」の適用塩分濃度を引き下げた代わりに、この関税分類での鶏肉輸入の急増を防止するために新たな関税枠を設定し、併せて七面鳥調製品および鶏肉調製品についても関税枠を設定することで合意に至っている。

 新たな関税枠については、当初のブラジルとの合意の時点では、枠内税率は現行税率と同率であったが、その後のタイとの合意により鶏肉調製品に係る枠内税率は引き下げられている。枠外税率については、すべての品目で関税分類番号020714の冷凍鶏肉に適用される関税率水準と同等もしくはそれ以上が適用されることとなっている。

 この新たな関税枠については、EUが輸入者に対し輸入証明書を発給することで管理を行うこととなっている。

 なお、12月12日現在、本関税枠の運用などに関するスケジュールについては明らかとなっていない。

EUが輸入する家きん肉に係る新たな関税枠


元のページに戻る