イギリスのフードチェーンの重要な根源を担う家畜遺伝資源
イギリス環境・食料・農村地域省(DEFRA)は11月7日、自国の家畜遺伝資源を保護するための行動計画を公表した。
同国での食料品・飲料製造業は、重要な製造業の一つで生産額の約15%を占める。この食料品・飲料製造分野のうち、食肉調製品や食肉加工品だけで、その約19%のシェアを占める。また、酪農関連製品も大きなシェアを占めている。この畜産分野での成功は、家畜の品種・系統の実績や能力によるものが非常に大きいものとなっている。したがって、同国のフードチェーンの重要な根源を担う家畜遺伝資源については、経済的、社会的、文化的にも非常に重要なものとなっている。
130種を超える家畜品種が存在
イギリスは、さまざまな品種の家畜が飼養されており、牛、豚、ヒツジ、家きんなど同国原産の品種は130種を超える。これらの品種は、起源となる地域に強く根付いており、その地域の経済や文化の発展に大きく貢献している。一方、これらの遺伝資源を用いた自国の家畜生産および将来の改良計画は、家畜改良の国際化や環境、動物福祉、食品安全に関する政策により変化してくるとDEFRAは分析している。
このような中、個人の繁殖生産者、各品種の協会、品種保護の慈善団体などの活動に大きく依存している古い伝統を持つイギリスの家畜遺伝資源の保護については、現状ではわずかではあるが分化した別品種の拡大や、繁殖生産者の経済的な問題により、脅かされている。
38件の具体的な勧告を記載した行動計画を発表
このような中、DEFRAは2003年、家畜遺伝資源に関する常設委員会を創設した。同委員会は、家畜遺伝資源に関する特別の助言委員会として位置付けられ、DEFRAは2002年、国連食料農業機関(FAO)に対する世界の家畜遺伝資源の状況に関する最初の報告書の中で、同委員会の創設を掲げていた。
今回発表された報告書に示された行動計画は、その家畜遺伝資源に関する常設委員会が作成したもので、畜産業界全体に関連があるものとして、同国の家畜資源は、いかに自国の経済、動物衛生、動物福祉、環境保護、文化に価値のある資産であるかを解説するものである。さらに本行動計画は、同国の家畜遺伝資源の多様性を将来的にいかにして保護、改善し、維持できるかを関係者および政府に勧告するものとなっている。
行動計画のうち、勧告部分については、以下の幅広い分野から構成され、38件の具体的な勧告として記載されている。
・家畜遺伝資源に関する常設委員会などが、市民、関連産業、政府関係者に対し、イギリスの家畜品種に関するより良い情報を提供していくこと。
・将来の家畜生産への効果的な利用のための情報および遺伝資源データの収集、質、有効性を向上させていくこと。
・イギリスの遺伝資源の多様性を保護するため優先順位、展開方法、実施計画を提言すること。
遺伝資源分野に関連する政府機関および関連産業との連携およびこれら関係者への家畜遺伝資源に関する教育などを通じての、家畜遺伝資源保護に対する意識向上のための活動を持続させること。
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