EUのフードチェーン・家畜衛生常設委員会は、2007年1月1日にEUに加盟するブルガリアおよびルーマニアに対し、食品安全や動物衛生分野において移行措置などを認める欧州委員会の提案を承認した。
ルーマニアの食品加工施設に関する移行措置
食肉加工場や乳業工場などの食品加工施設については、すでにEUの食品安全に関する基準を満たすものおよび加盟条約により移行期間が認められる一部の施設は、加盟後も操業が続けられるが、それ以外のものは、2007年以降は操業できないこととなっている。
今回、ルーマニアの387施設が2009年末までにEUの衛生基準を満たすことを条件に移行期間中の操業が認められることとなった。ただし、これらの施設から製造される製品については自国内の流通しか認められておらず、ほかの加盟国への流通を防止するために特別な表示を付すこととなっている。
乳業工場の生乳の受け入れに関する移行措置
ルーマニアの乳業工場が受け入れる生乳のうち、EUの衛生基準を満たすものは2005年には半分以下となっていた。このような現状から、衛生基準を満たさない生乳の受け入れについて2008年6月30日までは認めることとした。
また、ブルガリアの乳業工場が受け入れる生乳については、その大部分がEUの衛生基準を満たしていない。このような現状から、衛生基準を満たさない生乳の受け入れについて2009年12月31日までは認めることとした。
両国のこれらの工場で製造される製品についても、自国内のみの流通と特別な表示を付すことが条件となっている。ただし、乳業工場のうち、生乳の受け入れ段階からEUの衛生基準を満たすものとそれ以外を完全に分離して製品化できる工場のみ、基準を満たす製品をほかの加盟国に流通させることが可能となる。
加盟前に製造された動物由来製品の取扱い
EU加盟前に、ブルガリアおよびルーマニアで製造・包装された動物由来製品については、2007年末までの一年間は自国内の流通が認められることとなった。これらの製品は、それまでに消費するか、2008年以降は市場から回収する必要がある。なお、加盟前の現時点で、すでにEUへ輸出が認められている施設の製品には、この流通の制限は適用されない。
また、加盟前に採取された動物の精液、卵子、受精卵については、加盟後8カ月間は自国内での流通が認められることとなった。
豚肉については、両国で豚コレラが頻発していることから、現在、EUは両国からの輸入を認めていないが、加盟後も同疾病が撲滅されるまでは本措置が継続されることとなっている。
加盟前に輸入された動物由来製品の取扱い
EU加盟前に、ブルガリアおよびルーマニアに輸入された動物由来製品については、現行のEUの衛生基準を満たさないものとして、2007年末までしか自国内での流通が認められないこととなった。これらの製品は、それまでに消費するか、2008年以降は市場から回収する必要がある。ただし、第三国が輸入を許可し、公的機関が封印を行い、ほかの加盟国を通過しないなどの厳密な条件を満たす場合にのみ、第三国への輸出が認められる。
また、これらの動物由来製品が、誤ってほかの加盟国へ流出することを防止するために、EUの衛生基準を満たし、ほかの加盟国での製品の流通が認められる加工場においても、これらを加工することを禁止する。
2007年家畜疾病対策予算の概要
欧州委員会は11月30日、2007年にブルガリアおよびルーマニアが実施する伝達性海綿状脳症(TSE)の撲滅対策・モニタリングおよび特定疾病の予防対策に関する委員会決定を適用した。両国における同対策予算の総額は1,150万6千ユーロ(約17億8千万円:1ユーロ=155円)となっている。
内訳を見ると、特に両国で頻発している豚コレラの撲滅対策に重点が置かれており、両国に計上された計568万ユーロ(約8億8千万円)は、EU25カ国のうちドイツなど5カ国が実施する同疾病対策予算の3倍以上に当たる。さらに、本対策におけるEUの補助率は50%が原則であるが、ルーマニアにおけるワクチン購入経費については補助率が100%となっている。
また、狂犬病対策について、EUは、2007年は東欧を中心に対策を講じる方針を打ち出しており、両国も、ほかの東欧諸国と同様に同疾病対策に取り組むこととなっている。
ブルガリアおよびルーマニアの2007年家畜疾病対策予算
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