最新の収穫見通しは、生産量をさらに下方修正
豪州連邦政府のマクゴーラン農相は10月27日、最新の穀物収穫予測がさらに下方修正するとの内容を受けて、飼料穀物の輸入が早ければ来年1月にも実施される見通しであることを明らかにした。
豪州農業資源経済局(ABARE)が10月27日に発表した最新の冬穀物の収穫見通しによれば、2006/07年度(7〜6月)の生産量について、干ばつの影響がさらに深刻化するとの予測から、すでに下方修正を行った前回予測(9月)をさらに下回る1,358万トンとしている。これは前年度の生産量比で63%減と大幅な減産となる。生産予測を品目別で見ると小麦が前年度比62%減の955万トン、大麦が同64%減の359万トン、カノーラが同69%減の44万トンといずれも前年度に比べ半分以下となっている。中でも最大の生産量となる小麦については、過去に、大幅な減産となった1995/96年度の900万トンに次ぐ減産見込みとなっている。
イギリス、米国からの輸入を優先、早ければ来年1月に実施
マクゴーラン農相は同日付けの報道発表で、「連邦政府は長く続く干ばつ見通しから農家が直面する飼料穀物の不足に対し、飼料業者から申請の上がっているトウモロコシ、ソルガム、小麦の輸入の実施により、これらがどの程度解消されるのか確認中である」と述べ、すでに40件の輸入申請が上がっていることを明らかにした。飼料の輸入申請が挙げられている国は、米国、イギリス、アルゼンチン、ブラジル、南アフリカ、中国、ウクライナ、カナダとしている。
また、同農相は報道関係者との会見で「現在、フィードロットには百万頭の肉牛が飼育され、酪農や養豚、養鶏も考慮すると、これら現場では、穀物価格の上昇による影響が深刻になっているとして、飼料穀物の輸入は、いわば価格対策上の必然性である」と述べ、その必要性を語った。
同農相は、申請数量の大きいイギリス、米国からの輸入については、過去にも輸入実績があることから、優先的に検討され、遅くとも11月末までには結論が出るとの見通しを明かし、夏穀物の生産見通しが今後の天候いかんによりどのようになるのか不明としながらも、冬穀物の生産不足を補うためには、遅くとも来年の1月初旬には輸入が開始されることになるとの見解を述べた。
実際の輸入に際しては、豪州政府は穀物などの輸入に関して厳しい検疫制度を設けていることから、科学的な条件に基づく検疫体制を行う必要があり、実際にはもう少し遅れるとの見方もある。
豪州では、2002/03年度の大規模な干ばつの際に、4万8千トンのトウモロコシを米国から、27万トンの小麦をイギリスからそれぞれ輸入している。
穀物価格の上昇は経営に影響、製品価格の上昇も
穀物生産がさらに減少すると予測される中で、穀物価格は上昇を続けている。2006年10月の飼料用穀物(小麦)価格は、トン当たり300豪ドル(2万8千円:1豪ドル=93円)を上回り、前年同時期の二倍近くになっている。このため、干ばつが長引く中で畜産農家にとっては大きな痛手となっている。特に、フィードロット産業や養鶏産業では経営面で大きな影響が表れている。フィードロット産業では、飼料価格の上昇が直接、経費の増加につながることから、肥育期間が短い国内向けなどにシフトする動きが出始めている。また、養鶏産業では、鶏肉生産コストの60%が飼料コストで占められており、燃料コストや人件費など他の経費が上昇する中で、これ以上の経費削減は不可能として、鶏肉出荷価格の値上げが相次いでおり、鶏肉の小売価格や鶏卵価格の上昇につながっている。
ABAREでは、長引く干ばつは、豪州経済にも影響を及ぼすとみており、2006/07年度の豪州の経済成長率を0.7ポイント引き下げると試算している。
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