引き続き堅調な農業総生産を維持
フィリピン農務省農業経済局(BAS)は11月13日、2006年1〜9月までの農業生産状況を公表した。農業部門全体における生産額(85年指標価格)は、前年同期比4.9%増の約2,186億ペソ(約4,372億円、1ペソ=2円)となり、2006年の農業総生産は堅調に推移している。
部門別に見ると、作物部門(同5.8%増)と水産部門(同7.5%増)が引き続き好調であり、畜産部門(牛肉、豚肉、水牛肉、ヤギ肉、乳製品)も同2.7%増と前年同期を上回っている。家きん部門(鶏肉、アヒル肉、鶏卵、アヒル卵)は、6月末時点の生産額が前年同期を約2.4%下回っていたが、鶏肉生産量が上昇傾向にあることから9月末時点では同0.3%減とほぼ前年同期並みの数量になっている。
豚肉生産量は好調を持続
畜産部門の生産量を品目別に見ると、豚肉の生産量が約132万2千トンとなり前年同期を約5万トン上回ったが、牛肉と水牛肉はともに前年同期を下回った。また、乳製品については、生産量が約1万トンと数量は少ないが前年同期を4.6%上回っている。家きん部門では、鶏卵の生産量が同3.6%増の24万2千トンとなったほかは前年同期を下回った。鶏肉の生産量は6月末時点では前年同期を約2.6%下回っていたが、9月末時点では同0.8%減の約81万9千トンとなりほぼ前年並みの数量まで回復している。
同国政府は、畜産分野において養鶏とともに養豚の振興を推進しており、人工授精の普及などによる優良種の増殖を目指している。同国では、ルソン島の南部地域で発生した豚流行性下痢症(PED)により、昨年6月以降、約6万頭の子豚が死亡するなど疾病の発生事例が報告されているものの、豚の生産量については増加傾向が続いている。この要因としては、同国政府による養豚振興策のほかに、前年の農家販売価格が比較的高値で推移したことによる効果などが挙げられている。
また、鶏肉については、アセアン各国で鳥インフルエンザ(AI)の再発が相次ぐなか、同国ではAIの再発が確認されていないことから、清浄国であることをアピールし、輸出振興にも力を入れている。しかし、ブロイラー、鶏卵などの主産地であるルソン島は、9月下旬に発生した大型台風により大きな被害を受け、鶏舎の修理などに1〜2カ月が必要とされていることから、今後の鶏肉生産への影響が懸念される。
トウモロコシなどは増収を予測
作物部門では、主要作物である米(もみ米)の生産量が同9.7%増の約954万6千トン、トウモロコシの生産量が同15.7%増の約483万2千トンと堅調な伸びを示している。生産量が増加した要因としては、前期と同様に米(もみ米)については品種と施肥方法の改良など、トウモロコシについてはハイブリッド品種の利用増加などのほか、適度な降雨量など気象条件に恵まれたことや害虫発生による被害がなかったことなどが挙げられている。そのほかの作物では、サトウキビの生産量が同4.2%増の約1,587万9千トン、バナナが同9.6%増の約503万4千トンとなっている。
同国政府は、2006年のトウモロコシの生産量について、前年を約10%上回る600万トン程度になると予測している。また、米(もみ米)の生産量については、台風による被害が懸念されるが、昨年を上回ると予測しており、輸入の必要はないとしている。
2006年1〜9月農産物生産量および生産額
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