EU市民は動物福祉に高い関心


EU市民は動物福祉を順守して生産された製品を喜んで購入

 EUの世論調査であるユーロバロメーターは3月22日、EU市民の動物福祉に関する意識調査の結果を公表した。この調査結果では、EU市民の多くが、動物福祉に関する諸規則をより高い次元で順守して生産された動物由来の製品(以下、「動物福祉製品」という。)について、これを取り扱う店を探すことやより高い値段でも購入するなどの努力を喜んで行う、となっている。

 今回は、EU加盟27カ国と加盟候補国のトルコとクロアチアまでを対象とした初めての調査であり、回答者の62%が動物福祉製品を購入するために購入習慣を変更するつもりであると回答している。


動物福祉への高い関心

 同調査では、動物福祉の取り組みについて10人中8人が「重要である」と回答している。その上で、自国でのここ10年間の動物福祉への取り組みの改善状況については、77%が不十分であると生産者にとっては厳しい回答となっている。特にギリシャ、キプロス、ポルトガルでは回答者の9割以上が、自国の取り組みにおいてさらなる改善が必要としている。

  また、動物福祉への取り組みがより促進されるためには、70%以上の回答者が動物福祉基準を順守した生産者に対し何らかの財政支援を行うことを支持し、89%の回答者がEU域内への輸入品についてもEUと同等の動物福祉基準を満たした家畜から生産されるべきと回答するなど、EU市民の同事項への関心の高さと、EUの水準が世界的に見て高い水準にあることを認識している結果となっている。


動物福祉への取り組みが消費者にもたらす利益

 動物福祉は、倫理上の観点から取り組むのみでなく、そのことで動物福祉を順守した製品が健康によく、また品質向上につながっている、との回答も多く見られた。

  半数以上の回答者が、動物福祉を順守した製品がほかの製品より健康によい、また48%の回答者が、ほかの製品より品質がよいと回答している。


EU市民は動物福祉に関するより多くの情報を要求

 このようなEU市民の動物福祉への関心の高さとは裏腹に、自国での生産段階での取り組み状況や製品として選択するための情報が不足していると感じている市民が半数を超えている。これに関連して、小売りの段階でどのようにして動物福祉を順守した製品を区別すべきかとの質問に対し、39%が表示による情報提供、35%がロゴマークの使用、26%が星の数による格付の利用を支持している。

  欧州委員会は、昨年1月に公表した動物福祉に関する2010年までの行動計画において、動物福祉に関する表示の規格化の導入に取り組むこととしており、今回の調査結果はこれを後押しするものとなっている。


生産段階での取り組み状況の温度差

 今回のEU市民への調査結果は、動物福祉への消費者段階での関心の高さを示すものであるが、加盟国によっては生産段階での取り組みが現実としてそれに十分こたえる水準に達していない事例も見受けられる。

  欧州委員会は3月21日、ギリシャが輸送およびと畜に関する動物福祉の基準を満たしていないとして、欧州裁判所に提訴することを決定した。98年から2006年の間のEU食品獣医局(FVO)の検査の結果、輸送に関しては輸送者名や輸送計画の管理、長距離輸送に必要な港湾施設の整備など、また、と畜に関してはスタンニングの実施後に適切な処理が行われていないなどの点で、EUの規則の違反が判明した。

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