EU市民の多くが現行の農業政策を肯定


 EUの世論調査であるユーロバロメーターは3月29日、農業や農業政策に対するEU市民の意識調査の結果を発表した。今回の調査では、2003年の共通農業政策(CAP)の改革を受けた現行の農業政策についてEU市民の多くが肯定しているとの結果が出た。

  この調査は、2006年末にEU25カ国の約千人に対面調査により実施したものである。


農業の重要性にかんがみさらなる支援を容認

 「今後も農業・農村地域が経済的・社会的に重要な役割を担うと思うか」との設問について、88%が肯定している。

  これに関連して、現在、EU予算の約40%を占めるCAP予算について、その水準の妥当性につき質問している。その結果、現行水準を「維持すべき」(32%)または「増やすべき」(26%)と約6割が農業・農村予算の維持・拡充に肯定的であったのに対し、「減らすべき」との意見は17%であった。


農業政策における優先順位

 EUが農業政策において優先的に実施すべき事項としては、消費者に対する健康的・安全な食品の供給(41%(複数回答。以下、本項目について同じ。))、生産者の公正な生活水準の確保(37%)、適正価格での消費者への食品の提供(35%)、環境保全の促進(33%)、動物福祉(25%)と続く。

  これを2004年4月以前からのEU加盟国である15カ国(EU15)とその後の加盟国(EU10:ブルガリア、ルーマニアを除く)に分けると回答の傾向に違いが見られる。EU15では環境、持続的生産、動物福祉、生産工程に関する情報などに関心が高い一方、EU10では農村開発、農産物市場の安定、家族経営の保護など生産者に関する事項に関心が高いとの結果が出た。


農業改革に対する高い評価

 EUでは、2003年のCAP改革を経て、生産者への直接支払いの大部分を、それまでの品目ごとの生産量に応じた直接支払いから、生産とは切り離された生産者を単位とした直接支払い(デカップリング)へと移行した。この直接支払いを受給するための要件として、クロス・コンプライアンスと呼ばれる一定の生産活動の条件を満たすことを要件としている。

  この、直接支払いをデカップリング方式に変更したことや農村開発予算を拡充していることについては、これを「望ましい」とする意見(49%)が「反対」(11%)を大きく上回った。そのほかの回答は、「どちらとも言えない」または回答無しであった。

  また、生産者への直接支払いの要件となるクロス・コンプライアンスについては、これにより生産者の環境基準の順守につながる(83%)、動物福祉基準の順守につながる(84%)、食品の安全性確保につながる(86%)と、8割以上の市民が本制度の導入に賛成している。


農業関連の情報などに接する機会は低水準

 農業に関する情報に接することが無いとの回答は72%、CAPに関する情報を聞いたり読んだりしたことがないとの回答は54%に上っている。なお、このような農業に関する情報に接する機会は、EU10でより少ない傾向にある。

  したがって、今回の調査結果の多くがEU市民の農業の重要性に関する認識を示すものであるが、それらの意見が確かな知識などに基づくものであるかはやや疑問が残るものとなっている。

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