アルゼンチン、長雨により農畜産業へ悪影響


穀物収穫の遅れによる品質への悪影響を懸念

 アルゼンチン農牧漁業食糧庁(SAGPyA)は、2006/07年度の主要穀物生産量について大幅増の見通しを発表(5月号トピックス参照)したところであるが、アルゼンチンでは3月に入り長雨が続いたことから、北部において穀物の収穫や畜産物の流通に悪影響が生じている。

  アルゼンチンでは4月から、トウモロコシや大豆の収穫時期を迎えている。しかしながら、SAGPyAは、長雨により穀物が過度に水分を含んでいること、未舗装の道路が寸断され収穫物を運搬できないことなどの理由により、昨年に比べ収穫作業が進んでいないとしている。5月に入り天候が回復し、急速に収穫が進められているものの、収穫の遅れによる品質への悪影響が懸念されている。


畜産物の品不足が徐々に顕在化

 長雨は、牧草の生育や生乳・生体牛の出荷など畜産にも悪影響を及ぼしている。

  全国酪農経営者同盟のドラレッティ会長は「ブエノスアイレス州、コルドバ州、サンタフェ州の3州で全国の90%の生乳生産が行われているが、これら地域の水害により、政府は生乳生産量について、前年同月で3月は5%減少、4月は13%減少を見込んでいるようである。サンタフェ州では半数の酪農場が冠水し、生乳処理量が30%低下している。被災した酪農場は大幅な減収となるだろう。また、乳製品の国内需要を満たすため、輸出は減少するだろう」と述べている。また3月30日にサンコール社は当面、乳製品の供給が減少すること、さらに4月11日にサンタロサ社およびミルカウト社は自らの判断により、国内向け乳製品の供給を優先するため、生産状況が正常な状態に戻るまでの間、粉乳輸出を停止することを発表している。

  雨による運搬事情の悪化は生体牛の出荷にも支障を来している。これに加え、今年に入って牛肉の小売指標価格を順守させるため、政府は生体牛の最高取引価格を市場取引参加者に伝えたと噂されている。この事実上の最高取引価格の設定は、生体牛市場への出荷頭数の大幅な減少と直接取引の増加を招来した。公表されている生体牛の市場価格に不透明感を持った生産者は、トウモロコシや大豆に生産意欲が向かっていると伝えられている。

  また畜産物の出荷への支障は徐々に消費にも影響を見せ始めており、ブエノスアイレス市および周辺の一部のスーパーマーケットでは、牛肉や乳製品の品不足が見られると伝えられている。

  なおSAGPyAは、州政府からの要望を踏まえ、被災農家への飼料の供給を目的として、エントレリオス州政府およびサンタフェ州政府にそれぞれ100万ペソ(3,864万円:1ペソ=38.64円)を交付している。

収穫状況


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