2006/07年度の農家経営、過去最悪との見通し ● 豪 州


1農家当たりの経営収支は平均59,800豪ドルの赤字

 豪州農業資源経済局(ABARE)は3月末、最新の農業経営の動向を探る農家調査「ファームサーベイ」を公表した。今回の調査では、2004/05年度から2006/07年度における農家の経営状況および損益見通しを報告している。この中で2006/07年度の農家経営について、100年に一度といわれる干ばつにより穀物の生産量が大幅減になったことに加え、飼料穀物価格の上昇が家畜の生産コストを引き上げたことで、1農家当たりの経営収支見通しは、1977/78年度に調査を開始して以来、過去最悪の状況になるとしている。

  ABAREによるこの調査では、部門ごとに農家を抽出して経営状況を分析しており、その対象は大きく分けて(1)穀物・畜産部門(穀物専業:小麦主体、穀物・家畜複合、肉牛専業、羊専業、羊・肉牛複合の5つに細分類)、(2)酪農部門の2部門で構成されている。

  2006/07年度の全部門平均の1農場当たりの事業損益見通しについてABAREでは、平均59,800豪ドル(586万円:1豪ドル=98円)の損失としており、前年度の黒字から一転して大幅な赤字が予想されている。特に、干ばつの被害が大きいニューサウスウェールズ州で85,648豪ドル(839万4千円)、ビクトリア州で73,287豪ドル(718万2千円)と両州での損失規模が大きく、これらが全体の損失をさらに拡大する要因となっている。一方、干ばつの被害が小さかった西オーストラリア州では298豪ドル(2万9千円)とわずかながらの赤字、北部準州においては271,894豪ドル(2,664万6千円)の黒字としている。


すべての部門で悪化、肉牛事業、乳牛部門ともに生産コスト上昇

 2006/07年度の事業損益を部門別に見ると、穀物・畜産部門では、穀物専業の112,349豪ドル(1,101万円)の損失を筆頭に、穀物・家畜複合が62,454豪ドル(612万円)、肉牛専業が40,457豪ドル(396万5千円)、羊専業が50,059豪ドル(490万6千円)、羊・肉牛複合が29,368豪ドル(287万8千円)と損失が続いている。

  この中で、農業として豪州で最も土地利用面積が大きく、広範囲に分布する肉牛専業の経営動向については、干ばつによる肉牛出荷頭数の増加に伴い肉牛価格が低下したことに加え、飼料穀物価格の急騰による生産コスト上昇が収支を大幅に悪化させるとみている。肉牛専業については、2002/03年度の大規模な干ばつによる経営悪化から徐々に立ち直りを見せ、2004/05年度以降、事業損益は黒字へと転換していた。

  一方、酪農部門については、穀物・畜産部門と同様、事業損益は大幅な赤字となっている。ABAREでは、干ばつにより乳牛の放牧が困難になったことで粗飼料の購入量が増加したことに加え、これらの価格の急激な高騰、また、乳牛の売却やとう汰による生乳生産量の減少などを要因としており、2006/07年度の事業損益は1農家当たり平均79,476豪ドル(778万9千円)の赤字とみている。

  酪農部門については、2002/03年度の干ばつの影響から抜け出せず、経営環境は厳しい状況にあったものの、世界的な乳製品需給の改善による乳価の上昇などで経営が改善され、肉牛専業と同様に黒字へと転換していた。

農家経営状況の推移(肉牛専業、酪農:1農家当たり)


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