生乳増産に対する問題点 ● ベトナム


積極的な畜産振興

 ベトナム農業農村開発省(MARD)は、2001年に策定された2001−10年社会経済開発戦略の下で、同国における畜産の振興に取り組んでいる。2005年時点における家畜の飼養頭羽数は、肉用牛が544万頭、乳用牛が11万頭、水牛が292万頭、豚が2,740万頭、家きん類が2億2千万羽であったが、2010年の飼養目標頭羽数については、肉用牛が710万頭、乳用牛が20万頭、水牛が320万頭、豚が3,300万頭、家きん類が2億8千万羽となっており、豚、肉用牛および家きん類が2005年時点より約2〜3割増、乳用牛は約8〜9割増とほかの畜種より高い目標が設定されている。

  肉用牛の増頭に関しては、同国中部のコントム省に飼養施設を建設し、交雑種を2010年までに合計で4万8千頭飼育する予定としている。水牛は、同国における飼養頭数の約9割が西北部のソンラ省および中北沿海部のゲアン省とタインホア省で飼養されている。従来、水牛は食用としてあまり重要視されていなかったが、今後は飼養頭数を2010年までに現在より約1割増加する計画としており、生産された水牛肉は、主にホーチミン市やハノイ市などへの供給を目的としている。


生乳の目標生産量は2005年の8割増

 同国における酪農の歴史は浅く、2001-10年社会経済開発戦略の下で、本格的な酪農振興への取り組みが行われることとなり、同時に策定された中期計画である2001−05年社会経済開発計画では、2005年における乳用牛の飼養目標頭数が14万頭に設定されていた。

  次期中期計画である2006−10年社会経済開発計画では、2005年の生乳生産量が20万トンであったのに対し、2010年には35万トンまで引き上げ国内需要の約3割を国産でカバーする計画としている。2010年の乳用牛の飼養頭数は2005年の約9割増、生乳の生産量は同約8割増と高い目標が設定されており、その実現に向け問題点も指摘されている。

  中でも、同国東北部のトュインクワン省では、酪農振興を図る目的で、2003年から2006年にかけて約3,300頭の乳用牛を導入したものの、2006年時点における乳用牛飼養頭数が約1,000頭にまで減少したため、同省政府が酪農振興計画の放棄を表明している。乳用牛の育成管理方法および飼料の確保などに問題があったとしている。

  特に、酪農振興に対する障壁として、生乳の農家販売価格が低いため農家の手取収入が低いことが指摘されている。その要因として、ビナミルク社(Vietnam Dairy Products Joint Stock Company)などの乳業メーカー主導で生乳の価格が決定されるためとしている。ビナミルク社への農家販売価格は、1キログラム当たり平均約3,500ドン(約25円:1,000ドン=7円)となっているが、当該農家販売価格から輸送・保管経費として、同200〜350ドン(約1.4円〜2.5円)を差し引かれている。同社はもともと国営公社であったが、2003年に株式会社組織へ移行し、同国で最大の乳業メーカーとなっている。このように、2010年の生乳の目標生産量を達成するためには、乳用牛の飼育管理技術や飼料の確保のほかに、農家収入の向上を図ることにより、離農を防ぐことも必要とされている。

元のページに戻る