米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は先ごろ、メキシコの食肉需要が2007年も引き続き拡大し、結果的に海外からの食肉の輸入量が増大すると予測する報告書を公表した。これによると、特に都市部の中高所得層において食肉消費の伸びが見込まれる一方、飼料価格の高騰の影響などにより鶏肉の生産は当初予測ほどの伸びは見込み難いとしている。牛肉:牛の飼養頭数は減少するものの、生産、輸入、消費ともに増加の見込み牛肉の生産は前年をわずかに上回るものの、牛の飼養頭数は前年に比べて若干減少すると見込まれている。特に、牛肉の3分の1弱を生産するフィードロットへの導入頭数は、飼料価格の上昇の影響により、減少すると予測されている。牛肉消費については、一人当たりの食肉消費量の増加と人口増により年々増加傾向にあり、2007年も前年を上回ると見込まれている。特に中高所得層での消費の伸びが著しく、また、ホテルやレストランでの需要も堅調である。 牛肉の輸入は、経済状況の改善や食肉需要の増大により、引き続き増加するものと見込まれている。2007年の米国産牛肉の輸入のうち約90%は部分肉(枝肉は約10%)だが、そのうち70%はかた肉・もも肉であり、いわゆる高級部位は約30%程度とされる。価格面・品質面で優位性のある米国産牛肉の輸入は、今後も増加するものと予測されている。 一方、メキシコ国内における牛結核などの防疫状況が改善し、子牛の生産も前年をわずかに上回ると見込まれるため、米国への生体牛の輸出は増加すると見込まれている。 豚肉:加工品や外食向けを中心に消費が拡大し、米国産豚肉の輸入も好調を維持豚肉の生産は、大規模な垂直統合型の企業養豚の進出もあり、生産コストの上昇にもかかわらず前年をわずかに上回るものと予測されている。メキシコでは母豚500頭以上規模の大規模養豚で肉豚の40%以上が生産されるが、一方で、約3分の1の肉豚が飼養頭数20頭以下の庭先養豚で生産されており、また、小規模な養豚業者(母豚200〜500頭規模)のシェアも25%以上ある。豚肉の消費は、中高所得層や外食産業での拡大が顕著であり、牛肉と同様に2007年も伸びを続けるものと予測されている。普及・啓もう活動による豚肉の栄養イメージの改善、小売業態の変化に伴うスライス肉やソーセージなどの浸透、連邦検査と畜場に対する政府の支援などが消費の増大に貢献している。また、都市部の中高所得層の購買先が伝統的な食肉専門店からスーパーマーケットにシフトしてきており、主に米国産のくず肉を原料として使用するソーセージの消費拡大にとって追い風となっているとしている。 豚肉の輸入は前年をわずかに上回るものとされており、人口の増加(2005年の推計人口増加率は1.17%)などにより、今後とも米国産肉豚および豚肉製品への需要拡大は続くとされている。他方、豚肉の輸出は高級部位を主流とするアジア向けが中心であるが、輸出量自体はあまり多くないとされている。
鶏肉:生産コストの増大により伸び幅が減少も、生産、消費ともに増大鶏肉の生産は前年の水準を上回ると見込まれるものの、飼料や資材の価格高騰による生産コストの上昇に加え、輸入鶏肉との競争激化により、当初見込みよりも下方修正されている。メキシコのブロイラー生産費に占める飼料費の割合は55〜60%とされるが、飼料のうち60%はソルガムとトウモロコシであり、その40%は輸入品(主に米国産)である。また、メキシコの鶏肉生産は垂直統合型の大規模養鶏によるものが主流で、大手3社の生産シェアが52%に達しており、公正競争法に抵触する可能性もあるとされている。一方、中堅の鶏肉生産者は合併を進める一方、小規模生産者の多くは契約生産者になっている。 鶏肉の消費については、生産量の下方修正と鶏肉価格の上昇に加えトルティーヤなどの主食価格の上昇による購買力低下もあって、当初予測から下方修正された。しかし、ほかの食肉より安価であるという利点もあり、2006年の水準は上回るものと見込まれている。 鶏肉の輸入についても前年を上回るものと見込まれているが、これは、輸入鶏肉の多くが仕向けられるソーセージなどの加工原料の需要増が背景となっている。主な鶏肉の輸入先は米国であるが、近年、チリからの冷凍鶏肉の輸入も増加傾向にある。ちなみに、2007年の北米自由貿易協定(NAFTA)枠の冷凍もも肉の関税割当量は約10.4万トンだが、過去2年間は割当枠を超える輸入がなされたため、一部に枠外税率が適用されている。
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