乳製品基金を設立することにより輸出税の引き上げを回避
生乳価格の引き上げをめぐって、生産者と乳業会社の対立が深まっていることについては既報であるが、豪州の干ばつの影響により、乳製品の輸出価格の大幅な上昇がみられることから、乳製品輸出業者は生乳価格を引き上げられたとしても、収益を保てるようになっている。
例えば、全粉乳の輸出価格は、昨年11月までトン当たり2,100米ドル(258千円、1米ドル=123円)から2,200米ドル(271千円)で推移していたが、12月に入ってから輸出価格が大幅に上昇したと伝えられている。
乳製品の輸出価格の値上がりを受け、ほかの品目と同様に輸出税が引き上げられることも想定されたため、乳業関係者は乳製品の国内価格の上昇を招くことなく、生産者も含め利益を共有できる仕組みの検討を進めた。そして1月5日に乳製品市場における補償制度に関する協定を締結したこと発表した。協定の主な内容は以下の通りである。
(1)乳製品の国内価格安定化のための基金(以下「乳製品基金」とする。)を創設すること
(2)乳製品基金の管理は経済生産省が行い、農業団体、流通加工団体、乳業会社などの各団体はこれを支援すること
(3)乳製品基金は乳製品輸出量に占める割合に応じ乳製品輸出業者が負担すること
(4)酪農経営に対する補償額、参加要件などに関しては政府が定めること
酪農経営に対する補償額は、輸出乳製品に一定価格を設定し、輸出価格から一定価格を差し引いた残りが乳製品基金に充てられる仕組みとなっており、輸出価格が現行の高い水準で推移した場合、30日間で約1億米ドル(123億円)を乳製品基金に集めることができると試算され、現在の生乳価格は1リットル当たり0.48ペソ(19円、1ペソ=39円)を1割程度引き上げることができると見込まれている。乳業会社ごとに乳製品の輸出割合が異なることから、輸出割合の高い乳業会社と低い乳業会社の格差を是正し、乳製品の国内価格上昇を招くことがないよう、基金方式を採用したものと考えられる。
乳製品基金は乳業に明るい展望をもたらすのか
年明け間もなくのインタビューにおいて、全国酪農経営者同盟のドラレッティ会長は「今年は乳業部門にとって明暗を分ける年となるだろう。輸出価格は非常に良好である一方で、生乳価格は低迷している。その上いくつかの大規模乳業会社は財務問題を抱えている。大きな機会に恵まれているにもかかわらず、これを享受できない状況にある」と不安な展望を述べていたが、補償制度に関する協定の発表後、コルドバ州酪農会議所のコリグリアニ副会長は「もし協定が期待される成果をもたらすのであれば、より支援された酪農経営に変わり、バランスのとれた道筋が印されることは確かである」と大きな期待を寄せている。
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