求められる豚成長促進剤の監視の徹底 ● マレーシア


成長促進剤使用報道で大幅に豚価格が低下

 2006年の前半、マレーシアでは豚価格が好調に推移し、5月には全国平均で100キログラム当たり670リンギ(22,780円:1リンギ=34円)を超え、これまでの最高水準に達した。しかしながら、その後は価格が低落傾向に転じ、9月に若干低下した後、10月以降は急激に低下し、2007年1月初旬の価格は460リンギ(15,640円)と実に昨年のピークから約30%下落した。これの背景には、豚肉価格が高値で推移した結果、生産意欲が刺激され、一部の生産者が、使用が禁止されている成長促進剤ベータアゴニスト(Beta-agonist)を使用する例があったとされるほか、これへの罰則が生産者でなく小売業者に厳しいと流通側が反発したため、マスコミに大きく報じられた。このため、心臓への影響など当該薬物の副作用による健康被害を懸念する消費者の買い控えにより豚肉の消費が減少し、価格も下がったとされている。また、豚の成長促進剤に関しては、同国において1種類が認可されているものの、同様の効果を示す違法薬品と比較して3倍もの価格となっており、違法薬品使用の原因となっていた。


保健相、検査終了後まで豚肉摂取を控えるようアピール

 このような中、11月初旬、保健相は消費者に対して、関係当局が豚の生産者と流通業者の検査をすべて終えるまでは、豚肉を食べるのをできるだけ控えるよう訴えた。同相によれば、事前に畜産農家協力連合(FLFAM)や農業・農産物省の関係者から、セランゴール州で1日に消費される豚3,500頭の約半分が違法と畜場からのものであると聞いたとしている。また、対策として、豚生産者に対し、豚の飼養ライセンスを交付する際に違法薬物を使用しない旨の署名を行わせ、3回違反した場合には農場の閉鎖を命じるほか、豚肉小売業者が安全な豚肉を購入できるよう、豚生産者または流通業者からの送り状の受け取りを義務化するなどのアイデアを示した。


残留がなくなる期間を設定後、30違反養豚場を公表

 一方、畜産を担当する農業・農産物省は、豚の成長促進剤による人の健康被害が懸念されることへの対策として、11月4日から3週間、認可薬を含むすべての成長促進剤の使用を中止し、豚の体内から残留がなくなるための期間が明けた11月23日から獣医畜産局(DVS)により養豚場とと畜場を検査するとした。通常、ベータアゴニストの残留は10日ほどでなくなるとされている。

 保健相を委員長としたベータアゴニスト濫用対策委員会は12月18日、半島マレーシアの養豚場のうち6割に当たる415農場についての結果を発表し、そのうち違反が発見された30農場の農場コード、農場名および住所を公表した。これらの農場は4つの州に所在しており、中でも首都のクアラルンプールに出荷することの多いマラッカ州の15農場、セランゴール州の7農場が指摘されている。これら公表された養豚場に対して、DVS局長は、衛生証明を発行しない旨を表明するとともに、新たに2週間の期間を設定するので、その後再度検査を申請するよう指導した。

豚生産者価格(生体)


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