中国の主要穀物生産予測、2007年は4億3千万トン強


トウモロコシ生産量は前年比2%増と予測

 中国国家糧油信息中心は2007年1月初め、主要穀物であるコメ、小麦およびトウモロコシの2007年の生産予測を公表した。これによると、穀物全体で、作付総面積は前年並みの7千9百万ヘクタール強、総生産量は前年比1.3%増の4億3千万トン強と予測されている。

表1 2007年中国主要穀物の生産予測


 このうち、小麦の生産量については、ナタネ栽培へのシフトによって冬小麦の作付けが減少することなどから、前年比3.4%減の1億トン弱と予測されている。また、トウモロコシ生産量については、その栽培収益が大豆を上回っていることを背景に、農民が大豆からトウモロコシへと生産をシフトしていることなどから、前年比2.1%増の1億5千万トン弱とされている。


生産シフトの背景に燃料向け需要などの拡大

 こうしたナタネやトウモロコシへの生産シフトの背景には、世界的に高まるバイオディーゼル油やバイオエタノールなどの増産機運があると推察される。特にトウモロコシについては、バイオエタノール向け需要の拡大に加え、酪農・乳業の急成長などを背景とした家畜飼料向け需要の高まりもあるといわれる。

 かつては原油の輸出国であった中国も、最近の高度経済成長を背景としたエネルギー需要の急増により、現在では国内原油供給量の4割強を輸入に頼っているとされる。このため、中国では、国内における原油の輸入依存度の低減と都市部の環境対策などを目的に、バイオエタノールやバイオディーゼル油などグリーンエネルギーの開発・生産が推進されている。特にバイオエタノールについては、2001年から生産が開始され、2005年の生産量は10億4百万ガロン(約380万キロリットル/出所:F.O.Licht)と、米国、ブラジルに次ぎ世界の生産量の8%を占める。2004年11月以降は、一部の指定地域において、すべての自動車に燃料用エタノールを配合した混合ガソリンの使用が義務付けられている。中国政府の関係者によると、国内のエタノール原料の4分の3はトウモロコシであると推定されているという。

 しかし、一方では、世界的に増大するバイオ燃料生産が、穀物の価格高騰と在庫水準の低下を招き、将来の食糧や飼料の確保に対する懸念の声も高まっている。

 中国国家糧油信息中心によると、ここ数年、エタノール生産などが含まれるトウモロコシの工業消費量は、実に年率2割を超える勢いで増加している。また、かつては1千万トンを超えた輸出量は年々減少し、逆に2005/06年度以降は数万トンから数十万トンのオーダーではあるが、輸入量が急増している。

表2 最近の中国トウモロコシ需給表


中国政府が食糧によるアルコール生産を規制

 こうした中、中国国家発展改革委員会と財政部は、2006年12月14日付け発改工業[2006]2842号(公表は同18日)をもって、各省・自治区および直轄市などに対し、国内の一部地域で行われているトウモロコシ由来のアルコール生産設備の無計画な拡大を支持しないとする緊急通知を発した。この緊急通知は、今後は主として非食糧原料によるバイオ燃料アルコール産業の発展を積極的かつ適切に推進するとし、トウモロコシ加工事業の認可を一時停止するとともに、建設中・計画中の事業についても、全面的に整理することを求めている。

 最近、中国では生産地域、販売地域ともにトウモロコシ価格が上昇している。言うまでもなく、量的にも多い家畜の飼料用需要と工業用需要の拡大が主要因であるが、一方では、多くの農民がさらなる値上がりを期待し、売り惜しみしていることも大きな要因となっているという。このトウモロコシ価格の上昇について、中国政府の関係者は、農業の産業化や農民所得の向上、工業と連携した農業育成という面では大きな役割を果たしていると評価している。

図 中国の主要地域におけるトウモロコシの卸売価格の推移(2006年)


 しかし、その一方で同政府関係者は、中国ではいまだトウモロコシ加工の技術水準が低い企業が多く、生産過程において発生する有機物を大量に含んだ廃水が新たな環境汚染を招いているほか、過度なトウモロコシ生産の拡大は、コメや小麦、大豆などほかの食糧生産の拡大余地を圧迫し、食糧品目のアンバランスや国家の食糧安全保障を脅かすことになるともしている。


国内大手石油企業は林業バイオマスなどの開発へ

 国家発展改革委員会は2007年1月8日、国内の大手石油企業などに対し、原油と石油製品、天然ガスの生産量を増加させるとともに、軽油輸出の減少を指示する通知を発した。また、1月中旬の現地報道によると、国内最大手の中国石油天然気股分有限公司(ペトロチャイナ)は、国家林業局との間で、林業バイオマスの開発・育成を行うことを内容とする協力枠組協定を締結し、共同で基金を設立するとともに、雲南・四川両省でバイオ燃料の原料となる森林育成と加工基地を整備するとしている。

 このほか、ペトロチャイナは、穀物以外のバイオマスを原料とするアルコール年産能力を、2010年までに全国のアルコール生産量の4割に当たる200万トン以上とするとともに、林業バイオマス原料によるバイオディーゼル油生産量を、年間20万トンの商業ベース規模にまで拡大するという計画を発表した。

 また、同じく国内大手の中国海洋石油総公司(CNOOC)は、天然素材を原料としたバイオ燃料の生産事業をインドネシアで行うことや、パームオイルとキャッサバからバイオエタノールを生産する合弁会社を香港の企業などと設立することを発表している。

 こうした動きを受け、中国国家林業局は1月22日、中国のエネルギー供給と構造の合理化、環境保護、農民の所得向上などを目的として、2010年までに80万ヘクタール余のバイオマス林を育成し、600万トンのバイオディーゼル油を生産するとの姿勢を表明した。

 しかし、中国では、キャッサバなど非穀物系バイオマス原料の大量作付けに関する技術水準がいまだ低いともいわれ、さらに、林業バイオマスの育成にもまだ時間を要することなどから、当面はトウモロコシを原料とするエタノール生産が続くものとみられ、一部のアナリストからは、今後の世界の穀物需給に懸念を表する声も上がっている。


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