英国養豚理事会(British Pig Executive:BPEX)は今般、英国における飼料価格が豚肉生産費に及ぼす影響について以下の通り報告している。
豚肉生産費のうち流動財費に占める飼料費の割合は77%
英国における食肉生産費のうち流動財費(この中に固定資産の減価償却や労働費は含まれていない)に占める飼料費の割合を見ると、牛や羊などの反すう動物では2〜3割程度であるが、反すう動物以外の家畜は飼料費の占める割合が高くなっており、豚肉では77%、家きん肉では82%となっている(なお、豚肉生産費に占める飼料費の割合は5割弱)。このことから、豚肉、家きん肉の生産費は飼料価格の変動による影響を大きく受け、例えば飼料価格が10%上昇した場合、牛肉などの生産費は2%程度の上昇で済むが、豚肉や家きん肉の生産費は8%も上昇し、牛などの反すう動物と比較して4倍ほどの影響を受ける。
飼料価格の大幅な上昇による豚肉生産費への影響
2007年7月時点の飼料価格の上昇による豚肉生産費への影響を見ると、飼料価格は、前年と比較して天候不良の影響から大幅に上昇しており、小麦は月平均でトン当たり119ポンド(約2万8千円:1ポンド=238円)と前年同月と比較して49%上昇している。また、大麦は同65%高、大豆は同15%高とそれぞれ上昇している。これらの影響を受けて、7月の豚肉生産費は前年同月と比較して1キログラム当たり16ペンス(約38円)上昇しており、飼料費の上昇の影響を大きく受けている。
また、1年後の2008年7月には、小麦は同131ポンド(約3万1千円)と2007年同月と比較して10%、大豆も同7%の上昇が予測されており、この影響から生産費は1キログラム当たり5ペンス(約12円)のさらなる上昇が推測される。
小売価格には反映されず
しかし、生産費が上昇しているのにもかかわらず、小売価格は比較的安定しており、飼料費上昇の影響をあまり受けていない。2007年8月下旬時点での価格の増減を見ると、前年同期と比較して生産費が29%上昇しているのに対し、生産者販売価格は1%高、小売価格は2%高にとどまっており、生産費が大幅に上昇しているものの、生産費の増加分が小売価格などに反映されていないことから、飼料費増の負担が生産者に重くのしかかっている。
同理事会は、今後とも飼料コストの上昇が続く場合、安定的な供給を行うためには、生産者や加工業者がさらなるコスト上昇分の多くを負担することはできないとしている。なお、飼料価格上昇に対する生産者側の対応策としては、短期的には飼料価格の影響を低減する先物契約の利用に加え、長期的には低コスト生産を模索することを提言している。
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