「9項目の100 %目標」実現で農産物の安全性確保へ
中国の孫政才農業部長は9月16日、農産物の品質安全特別任務の指導監督のため上海市を訪問し、市内の卸売市場や薬物残留検査などの現場を視察した。その上で孫農業部長は、国務院製品品質・食品安全指導小組(組長:呉儀国務院副総理)の方針に基づき、全国各級政府の農業部門に対し、責任を持って問題を確実に解決し、農産物の品質安全任務を通じて中国農産物の品質向上を促進すべきであるとした。
同時に、孫農業部長は2007年9月から12月にかけて全国展開される農産物品質安全特別キャンペーン期間中に100%とすべき9項目の目標を示し、各級政府の農業部門に適切に実現するよう要請した。孫農業部長が示した「9項目の100%目標」は、以下の通りである。
1 農薬および栽培農産物に関する規則に違反した生産、販売を禁止するとともに、5種類の高毒性農薬(メタミドホス、パラチオン、パラチオンメチル、モノクロトホスおよびホスファミドン)の使用を根絶し、これらに違反して押収された農産物を100%廃棄する。
2 無公害農産物(2002年4月から実施され、農業部の直属機関である農産品質量安全中心(農産物品質安全センター)が無公害農産物管理弁法に基づき認証)の生産モデル基地、農業標準化モデル基地における残留農薬検査の抽出率を100%にまで高める。
3 畜産物に関し、飼料添加物の生産許可証交付企業における検査率を100%にまで高める。
4 動物用医薬品および豚の生産に関し、動物用医薬品製造企業の薬品生産品質管理規範(GMP)の認証率を100%にまで高める。
5 重大な動物感染症のワクチン製造企業に対する監督検査率を100%にまで高める。
6 水産物の残留薬物に関し、健康養殖モデル場、輸出用原料登録基地および無公害水産物生産企業において、生産、薬品の使用状況および販売について100%記録する制度を構築する。
7 種苗生産部門の生産許可証の取得率を100%にまで高める。
8 禁止薬物が検出された陽性サンプルに対する追跡調査および問題解決率を100%にまで高める。
9 農産物卸売市場に関し、全国大・中都市の卸売市場を100%モニタリング対象として取り込む。
全国各地でさまざまな安全啓発活動を実施
中国政府は、中国製品の品質および食品安全性についての信頼と国際的なイメージ向上などを図るため、8月25日から4カ月間に及ぶ全国製品品質・食品安全特別キャンペーンを開始した。9月6日には、農業部、国家発展改革委員会、商務部、国家質量監督検験検疫総局、国家工商行政管理総局、海関総署および公安部の7省庁が合同で査察チームを組織し、北京市、河北省、吉林省、重慶市、河南省、広東省および陝西省において、農産物の品質安全性に関する現地査察の実施が発表された。合同査察チームは今後、さらに多くの省・市への査察活動を展開し、農産物の品質安全問題を徹底的に解決していく方針とされる。
また、河南省東部の開封市では、9月の新学期開始に合わせ、地元工商局の職員が同市開封県内の全小・中学校に赴き、児童および生徒に対して食品の安全性に関する知識・権利意識の普及や商品の真偽の見分け方などをレクチャーした。首都・北京市では、北京市品質監督局の関係者が9月11日、食品の品質安全性に関する警告システムを確立し、北京市内で生産・加工される食品の安全リスクの減少、食品事件の処理能力の向上、潜在的な食品安全リスク要因の分析および対策を実施するとともに、食品安全リスク警報を発表する予定であることなどを明らかにした。
北京で国際食品安全会議開催、中国に行政機構改革の提言も
こうした中、中国では9月12、13日の2日間にわたり、国際食品安全・品質統制会議が北京市で開催された。会議には世界保健機関(WHO)、国連食糧農業機関(FAO)などの国際機関および米国保健社会福祉省食品医薬品局(FDA)の関係者のほか、世界の大手食品企業の品質管理担当者なども出席し、食品の品質管理や安全性などの問題について幅広い討議が行われた。開会式では、あいさつということもあり、中国の食品安全性確保に向けた決意や取り組みを評価する声が相次いだが、13日の会議では、検査により中国の食品は99%安全とする中国政府の主張に対し、シュラントWHO食品安全部長が、1%でも問題があれば数百万人に影響すると述べ、100%の安全性確保に向けた意識を持ち続けることの重要性を指摘した。
また、席上、同食品安全部長は、中国では食品安全性に関係する問題の担当部署が9省庁にわたっているとし、生産現場から食卓に至るまでのすべての段階およびこれに関係する省庁を網羅した食品安全法の必要性を提言するとともに、担当部署の統合など中国の行政機構改革や省庁間の協力強化が不可欠であるとした。
農業部が農産物品質安全法をPR、一方では品質安全マークの偽造も
中国製品への信頼性と食品の品質安全性の確保が政府の重要任務と位置付けられる中、農業部は先ごろ、農産物品質安全法(本誌海外編2006年7月号中国トピックス参照)の施行(2006年11月1日)から1年近く経過することを受け、同法の効果と農産物の品質安全知識などを普及するとともに、食品の消費量が増加する中秋節(旧暦8月15日=2007年は9月25日)および国慶節(10月1日)における農産物の消費安全確保のため、9月24〜28日を農産物品質安全法PR週間とし、全国的な活動を展開することを決定した。PR期間中、農業部は農産物品質安全法の確実な実施に向けたシンポジウムの開催や科学的な農産物の安全性確保に向けたネットフォーラム、印刷物の配布などを行うとともに、農産物の安全管理体制や仕組み、措置などについて、各方面の意見聴取などを通じ、真剣に検討することを表明した。
中国ではここ数年、端午節(旧暦5月5日)向けのちまきや中秋節向けの月餅などに問題が発生していることから、当局はいわゆる「季節もの食品」の品質や安全性に対する監視を強化しているといわれる。国家質量監督検験検疫総局は、8月29日の記者会見で、すべての菓子製造企業が販売する商品に対し、2007年末までに品質安全標章(Quality
and Safety Mark:QSマーク)の張り付けを義務付けると発表した。QSマークは、中国政府が検査により安全性を認めた商品に張り付けられる品質保証マークであり、将来的には、市中に出回るすべての加工食品への張り付けが義務付けられることとされている。しかし、一方では、QSマークの偽造業者が摘発されるなど、中国における食品の安全性確保に向けた道のりは、今後も紆余(うよ)曲折が予想される。製品や食品の多くを中国から輸入しているわが国にとっても、中国産品の信頼性と安全性の確保は、日本国内の需給に大きな影響を与える要素の一つであり、今後の動向が注目される。
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