トウモロコシ:中国でも記録的な生産増に


◇絵でみる需給動向◇

● ● ● 2007/08年度の生産量は2.1%増 ● ● ●

 米国農務省(USDA)が本年7月に公表した世界の農業生産(World Agricultural Production)によると、中国の2007/08年度におけるトウモロコシ生産は、トウモロコシ価格が上昇したこと、飼料向けおよびバイオ燃料向け需要((筆者注)中国政府はトウモロコシなどの食糧についてバイオ燃料向けを抑制し、新規は認めない方針を明確にしている。)が堅調であったこと、大豆に比べて高い収益が得られること、生産農家に対して政府支援(種子購入費、鉄道輸送費などへの補助金)があることなどを材料に、2007/08年度(10月〜翌年9月)の作付面積は、前年度を3.0%(80万ヘクタール)上回る記録的な2,780万ヘクタールが見込まれている。このため生産量も前年度を2.1%(300万トン)上回り、これまでで最高の1億4,800万トンと見込まれている。

 トウモロコシの主要生産地域の一つ東北三省(吉林省、遼寧省、黒龍江省)では作付面積の増加が著しく、前年度を8.68%(64.7万ヘクタール)上回る810万ヘクタールが見込まれている。特に黒龍江省の作付面積の増加が著しい。収量を増やすため、交雑種(ハイブリッド)の作付けを行っているが、2007/08年度の単収(トン/ヘクタール)は、記録的であった昨年度の単収5.37をわずかに下回る5.32になると予測している。


● ● ● 東北部の干ばつは緩和するが、中央部では記録的な豪雨 ● ● ●

 春トウモロコシの作付け時期である3、4月における土壌中の水分と気温は、生育環境として適当であり、また、今夏の南部地域における降雨量は十分である。東北部と北部平原地域で5、6月に干ばつが発生し、成長期にある春トウモロコシの生育を妨げる要因となったが、広範囲にわたる降雨が7月にあったことで、干ばつによる影響は緩和され、生育環境は改善されている。冬小麦が収穫された後の北部平原地域では夏トウモロコシの作付けが行われた。作業は、好天に恵まれ順調に進んでいる。7月に生育に必要な降雨があり、生育環境に恵まれたため、発芽やその後の成長が良好である。

 一方、中央部6省にわたる地域では、6月中旬以降50年ぶりの被害規模となる豪雨が発生している。局地的な洪水が引き起こされ、浸水した農地が550万ヘクタール以上に及んでいる。特に深刻なダメージを受けているのは、黄河と揚子江に挟まれた東部地域にある淮河流域である。川や貯水地の水量が警戒水位を超えており、今後とも平年を上回る降雨量が見込まれることから、現地の行政当局者は、洪水対策措置を講じている。


● ● ● 消費量は工業用向けの増加が顕著 ● ● ●

 輸出量を加えた中国における2006/07年度のトウモロコシ需要量は、前年度を2.9%上回ると見込まれている。トウモロコシの供給増加量が、当年度の需要量をやや下回るため、期末在庫は前年度より290万トン減少する。

 中国農業部によると、消費量は工業用向けの増加の勢いが強く(前年度比18.8%)、国内のトウモロコシ需給がひっ迫する可能性もあるとしている。

 なお、中国国内のトウモロコシ価格は、中国農業部の本年6月のトウモロコシ市場監測信息によると前年に高騰した後、2007年の上半期はその勢いがやや緩和したが、高水準で推移しながら上昇しており、生産地における価格は、特に東北部が顕著に上昇する一方、消費地における価格は安定的に推移している。


● ● ● トウモロコシ高から、中国でも大豆生産は減少 ● ● ●

 中国における2007/08年度の大豆生産は、トウモロコシに比べて大豆の収益が比較的小さいことから、生産者は大豆からトウモロコシの生産に切り替えている。このため、作付面積は前年度を5.4%(50万ヘクタール)下回る880万ヘクタールとなることから、生産量は減少が見込まれ、前年度を3.7%下回る1,560万トンとしている。

 中国における大豆生産量の半分以上は東北部(東北三省(吉林省、遼寧省、黒龍江省)及び内蒙古自治区)であり、特に黒龍江省の作付面積の減少は40万ヘクタールと著しい。2007/08年度の単収は、2006/07年度の1ヘクタール当たり1.74トンを上回る同1.77トンが見込まれており、10年間のトレンド並みの水準としている。

米国農務省による中国の作付面積の推移


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