計画公表後、1年余を経て法制化
アルゼンチン農牧漁業食糧庁(SAGPyA)は6月19日、国家畜産計画を定めた決議第246/2007号(6月14日付け)を官報に公布した。これは昨年7月24日、キルチネル大統領自らが大統領官邸において関係閣僚の同席の下、発表した国内畜産の安定的成長の基盤を構築することを目的とした「畜産および牛肉産業振興のための「畜産振興計画」」を法制化したものである。
同決議では、第一義の目標に持続的成長が可能な生産活力を生み出しながら、国内、海外市場への適切な供給のための牛飼養頭数の確保および牛肉供給の効率性の改善を掲げ、(1)牛肉供給量の増加、(2)流通、情報システムおよび市場の透明性の改善−を具体的な目標に、これらの目標達成のために以下の対策が定められている。
・州畜産計画への支援:すでにいくつかの州が有している家畜導入や施設整備への低利融資などを含む畜産計画に対し、政府が支援を行う。
・子牛の増頭:後述
・個体識別、家畜移動および衛生管理システムの更新
・牛および牛肉流通システムの整備:これまで主流であった枝肉流通は、それぞれの販売部位の特定需要を考慮せずに全構成部位が各販売店に届けられることを意味しており、部分肉/枝肉の分割流通により、需要に応じて各部位の販売を適応させることで効率化を図る。
繁殖経営への支援を重視
この計画の中枢となるのが「子牛の増頭」対策である。同計画では、牛肉生産量を増加させる上で、繁殖経営への支援が最も必要であるとしており、飼養頭数規模別に受益内容と条件が定められている。支援を受けようとする繁殖経営は、2010年までの4年間の生産計画の策定が求められる。これに対し、助成金として、繁殖雌牛の飼養頭数が51頭以上100頭以下は最高1万ペソ(40万円:1ペソ=40円)、101頭以上500頭以下は1万ペソを超える1頭当たり25ペソ(1千円)が支給されるが、助成限度額は同一生産者当たり2万ペソ(80万円)となっている。また、飼養頭数が50頭以下または500頭以上の生産者も含め、すべての繁殖経営は、アルゼンチン国立銀行あるいはそのほかの金融機関との協定を通じてSAGPyAの助成による金利で融資を受けることが出来る。なお、この助成金は衛生・繁殖管理の向上、飼料供給の改善、家畜改良、施設整備(牧柵、追い込み場など)などの対策に利用され、生産者は公認会計士の証明を添付した支出報告書を12カ月以内に提出することが義務付けられている。
農業団体は相次いで畜産計画を批判
一方、アルゼンチン農牧連盟(CRA)は、子牛増産の助成を骨子とする同計画に対し、「このような計画の実施はアルゼンチン畜産の地位を回復するために必要とされる根本的な解決にはならない」と否定的な態度を示している。CRAは、繁殖へのインセンティブが、政府により介入された市場、限定された輸出、輸出税の適用といった環境下において実施されることを踏まえ、「畜産には予測可能性と明確なルールが不可欠である」としている。また、ブエノスアイレス州およびラパンパ州農牧連合会(CARBAP)も「同計画は、単に生産者へ輸出税として徴収した資金を配分するにとどまる。国内消費向けでない部位を含んだ輸出制限が続き、生産の見通しが立たない状況下においては、この計画は実行不可能である」としてこれを拒否している。 |