VIC州酪農団体は支持する一方、乳処理業者は慎重な反応
豪州最大の生乳生産および輸出地域であるビクトリア(VIC)州の酪農団体であるVIC州酪農家連合(UDV)は6月19日、年次総会において、今後、家畜飼料としてGM作物の生産を支持していくことを決定した。同団体は、これまでGM作物の生産に反対する立場をとってきたが、その方針を一転させたこととなる。豪州の酪農が競争力を維持するためには、GM作物による生産性の向上などを図る必要がある。GM作物を利用することにより、作物の収穫量が増加すると同時に環境や衛生などの面でも改善が図られるとしている。また、こういったVIC州酪農団体の動きに続いて、サウス・オーストラリア州酪農協会(SADA)も同様にGM作物の生産を支持していくことを表明した。
一方、今回の酪農団体の決定に対し、乳処理業者からは慎重な反応が見られる。大手乳処理業者であるマレー・ゴルバンは、同社として重要なことは世界の消費者が満足する製品を提供することである。したがって、今回の酪農団体の決定にかかわらず、今後も引き続きGMフリーの飼料から生産された生乳を原料として使用していくとしている。また、ナショナル・フーズは、重要なことは消費者に対して同社の製品はGMフリーであると保証することであるとしている。そのほかの乳処理業者も、当面は現行どおり、GMフリーの飼料から生産された生乳を使用するといった考えが大勢を占めている。
VIC州政府は、2008年2月以降のGM作物の対応について検討中
豪州では現在、クイーンズランド州、ニュー・サウス・ウェールズ州における綿花およびVIC州におけるカーネーションを除き、GM作物の商業栽培が禁止されている。
VIC州では、現行のGM作物商業栽培の禁止措置が2008年2月末に期限を迎えることとなっており、現在、同州政府は委員会を設け、それ以降の対応について検討している。
また、同州政府のGM作物についての対応が、その後の他州の対応に大きな影響を及ぼすとも見られている。
豪州で初めてのGM小麦の農場栽培試験が認可
豪州では6月14日、豪州で初めてとなるGM小麦の農場での栽培試験が認可された。この試験栽培は、干ばつ耐性のGM小麦が用いられ、VIC州の2つの地域で作付けされる。この試験結果は、来年3月に判明するものの、商業栽培に至るまでには、今後、5〜7年を要すると見られている。VIC州農業者連盟(VFF)はこのことについて、昨年からの厳しい干ばつといった環境条件で、現行より多くの収穫が可能となる品種ができることに期待する、としてGM作物の生産を支持する立場を見せている。
連邦政府はGM作物の商業栽培を促進
豪州連邦政府は、GM作物の商業栽培を促進する立場をとっている。
豪州農漁林業省のマクゴラン大臣は、州政府に対してGM作物の商業栽培禁止措置を取りやめるよう働きかけている。同大臣は、世界の競争相手国が干ばつ、害虫や作物の疾病に対する対応を進めている状況の中で、豪州の生産者は不利益を被っていると述べている。
また、豪州貿易省のトラス大臣は、豪州でGM作物を生産することは、豪州の輸出市場に危害を及ぼすものではない。現行のGM作物の禁止措置を継続した場合、豪州の農業は、積極的に新しい技術を取り入れているインド、中国および北米から立ち遅れることになりかねないと指摘している。
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