低調な肉豚生産者価格(タイ)


豚生産者価格は依然として低調

 タイ農業・協同組合省(MOAC)農業経済事務所は、5月の肉豚生産者価格(生体100キログラム以上:速報値)の速報値を公表した。これによると、豚生産者価格は前年同月比約25%安のキログラム当たり37.3バーツ(約145円:1バーツ=3.9円)となり、今年1月以降、生産者価格は上昇傾向にあるものの、依然として同30バーツ台の低水準が続いている。タイ養豚協会は昨年末、豚の過剰生産により生産者価格が下落していることを公表(「海外駐在員情報」752号参照)しているが、5月時点では生産コストとされる同40〜42バーツ(156〜164円)の水準には達していない。

 肉豚価格が低迷している理由としては、肉豚の過剰生産のほか同国経済の停滞により豚肉消費量が減少していることなどが指摘されている。長引く肉豚価格の低迷に対処するため、タイの豚肉委員会(Pig Board)は大手インテグレーターなどに母豚のとうたを求めている。また、同国政府は肥育豚の削減を図るため、子豚の製品化を促進するための経費として予算額2千万バーツ(7千8百万円)を承認した。これにより、20万頭の子豚削減を目標にするとしている。さらにMOACは、現在、国内において豚の実飼養頭数が把握されていないことも問題としており、効果的な計画生産を実施する上でも、養豚農家に対して農家登録の必要性を強調していくとしている。


豚肉価格回復への取り組み

 また、MOACは豚肉価格の下落要因として、同国が口蹄疫の常在地域のため同国産豚肉の輸出に制約があることも理由として挙げている。現在、同国産の生鮮・冷凍豚肉の輸入を認めているのは香港のみであり、日本やEUなどは加熱処理した豚肉しか輸入を認めていない。このため、MOACは豚肉の輸出促進を図るため、東部地域を国際獣疫事務局(OIE)の基準を満たす口蹄疫清浄地域にする計画を策定している。その内容は、(1)家畜の違法な移動を防止するための管理システムの策定、(2)地域内の全家畜へのワクチン接種、(3)家畜の防疫および免疫状態の把握のための血液検査、(4)病気に罹患した家畜のとうたを進めるための補償費の計上−としている。予算は約4億バーツ(約15億2千万円)が予定されており、計画遂行期間は5年間を予定している。

 MOACによると、OIEにより口蹄疫清浄地域として認定されれば、日本やEU、シンガポールなどへの生鮮・冷凍豚肉の輸出が可能になることから、豚肉輸出額は年間約100億バーツ(約390億円)が見込めるほか、国内への豚肉供給過剰も軽減することが可能としている。

 また、養豚生産者団体も、政府による口蹄疫フリーゾーン設置計画に対し全面的な協力を表明している。同団体は、香港市場が中国産豚肉との競合により苦戦を強いられていることもあり、今後は香港以外への冷凍豚肉の輸出開始に期待を寄せている。

 一方、同国産の豚肉調製品の輸出量は順調に増加しており、養豚生産者団体は、日本とEU市場を重視しているほか、ロシアなどの新規市場の開拓も図りたいとしている。

 また、豚肉加工団体関係者は、特に日本向けの輸出数量が今後も増加すると見込んでいる。今年に入ってからも、最大手インテグレーターであるチャロン・ポカパングループと日系企業との合弁による豚肉加工場が操業を開始しており、主に日本市場へ向けた製品を製造している。

 

               肉豚生産者価格の推移(100kg以上)
           


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