2008年1月の牛飼養頭数は前年同月比1.5%減の1,395万頭、肉用肥育牛の減少が顕著
カナダ統計局(Statistics Canada)が2月14日に公表した牛の飼養動向調査結果によると、2008年1月1日現在における同国の牛総飼養頭数は、前年比1.5%(21万頭)減の1,394万5千頭となった。
その内訳を見ると、乳用牛が同1.6%減(乳用未経産牛は同1.9%減)、肉用繁殖雌牛が同0.6%減(肉用未経産牛は同1.8%増)とわずかな減少にとどまったのに対し、肥育用去勢牛(12カ月齢以上)は同3.8%減と比較的大きな減少幅となっている。また、肉用牛の飼養頭数を経営体別で見ても、繁殖経営では同1.0%減(858万頭)、育成経営では同1.9%増(190万頭)となった一方、肥育経営では同8.6%減(144万頭)と肥育部門での減少傾向が顕著となっている。
生体牛輸出は前年比35%増、国内と畜頭数は同6%減
この背景には、米国への生体牛輸出の増加がある。カナダから米国への生体牛輸出は、同国で2003年5月にBSEが確認されたことを受け一時停止されたが、米国側は2005年7月に30カ月齢未満の生体牛輸入を再開し、さらに2007年11月には、輸入月齢条件を99年3月以降に生まれたものに引き上げたことなどから、2007年の生体牛輸出は、前年比35.0%増の139万頭とされている。
また、同時に、米国農務省経済研究局(USDA/ERS)による2007年のカナダからの生体牛輸入の内訳を見てみると、700ポンド(約318キログラム)超のと場直行牛が同21%増であるのに対し、400〜700ポンド(約181〜318キログラム)の肥育牛は同52%増となっており、特に、同年8月以降、体重の軽い肥育牛輸入の増大傾向が強くなっている(400〜700ポンドの肥育牛輸入頭数は、同年上期には前年同期比15%増、下期では同90%増)。
一方、カナダ国内における牛と畜頭数の推移を見ると、2004〜2005年上半期にかけては、と畜能力の拡大や国内外の需要の増大などにより記録的な高水準に達したものの、2006年以降は、米国への生体牛輸出の増加や、カナダドル高傾向に伴う牛肉輸出の減少などにより徐々に減少し、2007年では前年比6%減の372万7千頭とされている。なお、同年の牛肉生産量は、同3.8%減の133万8千トンとされている。
飼料コスト高と肥育牛価格の低迷により2007年下半期以降肉牛生産者の収益性は悪化
カナダ統計局によると、2007年下期以降、同国における肉用牛肥育経営の収益性は、肥育牛価格の低迷や飼料コスト高の影響により悪化してきたとされている。
同国における去勢牛(12カ月齢以上)飼養頭数およびと畜頭数の5割強を占めるアルバータ州の肥育牛取引価格を見ると、2007年上半期平均は、前年同期を7%程度上回っていたものの、同年7月以降は下落基調に転じ、下半期平均は、前年同期を3%程度下回る100ポンド当たり82.94カナダドル(キログラム当たり119円:1カナダドル=109円)となっている。
また、同局によると、同年9月の大麦(西部地域)およびトウモロコシ(オンタリオ州)の価格は、前年同月をそれぞれ約5〜6割上回る水準に達したとされており、この継続的な飼料穀物価格の高騰が、肉用牛肥育経営を圧迫し、肥育素牛価格の引き下げ要因の一つになっているとしている。
先般、ワシントンDCで開催された農業観測会議(Agricultural Outlook Forum、USDA主催)の畜産分科会において、カナダ畜産部門の現状と見通しに関する講演を行ったマニトバ州豚肉マーケティング協同組合のタイラー・フルトン氏によると、同国の肉牛繁殖経営は、依然としてBSEの影響は残るものの、ほぼ採算がとれる現状にある一方、肥育経営については、本年1月のアルバータ州およびサスカチュワン州にあるフィードロットへの導入頭数が前年比48%減(8万9千頭、2月1日現在のフィードロット飼養頭数は同13%減の約90万頭)となるなど、収益性の悪化が深刻な状況にあるとされていた。また、同氏は、今後の肉牛部門の見通しについて、(1)飼料コスト高の影響などによる繁殖雌牛の飼養規模の縮小、(2)肥育部門の収益性悪化によるフィードロット飼養頭数の減少、(3)米国への生体牛輸出の継続的な増大―などが見込まれるとの見解を示していた。
カナダの牛総飼養頭数の推移
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