欧州議会の農業委員会は2月26日、昨年12月に欧州委員会が提案した2008年4月から予定する生乳クオータ2%拡大提案に関し、新たな妥協案を採択した。
加盟国における生乳生産拡大数量2%は任意の目標数字
今回の農業委員会の妥協案は、加盟国ごとの2%の生乳生産拡大は任意の目標数値とし、生産拡大余力がある加盟国が仮に2%を超えて生産を行っても、EU全体でクオータを超過していなければ課徴金を課さないとするもので、加盟国の生産状況のバランスに配慮したものとなっている。
先の欧州委員会の提案では、2007/08年生乳度分として設定されている27のEU加盟国別の生乳クオータをそれぞれ2%拡大し、これにより新たに284万トン分のクオータが追加される。この場合、新たに設定されるクオータを超過した加盟国に対しては、現行どおり100キログラム当たり27.83ユーロ(4,450円:1ユーロ=160円)の課徴金が課されることとなる。
しかし、2006/07年度にはフランス、イギリス、ハンガリーなどを中心にクオータの未達が合計で270万トンになるなど、近年、生乳生産量がクオータを下回る加盟国が多く見られ、欧州委員会の提案ではクオータの拡大に伴う生産量の増加は限定的と見込まれている。一方、ポーランド、オランダ、イタリア、ラトビア、ルーマニアなど増産意欲の高い加盟国からは、クオータの拡大率が2%では少ないとして、5%とする提案がなされるなど、クオータ拡大に対する加盟国の期待感には少なからず差がある。
今回の農業委員会の提案は、欧州委員会の提案に比べ、EU全体での生乳生産が増加し、EU域内外における乳製品需要の増大への対応がより可能となる。
3月農相理事会で最終的に決定
今回の欧州議会農業委員会の妥協案については、最終的に3月10〜13日に開催される欧州議会本会議で採択に付される予定である。
なお、農業分野に関する欧州議会の権限は、現在、欧州委員会の提案について、理事会採択の前の意見を述べるにとどまっており、理事会は議会の意見を必ずしも採り入れる義務はない。
最終的には3月17〜18日に予定される農相理事会で、本年4月からの生乳クオータ拡大が合意されると見込まれ、関係者の間では「2%」の拡大についての合意はほぼ間違いないものと見られているが、その運用についてどのような合意がなされるのか注視が必要となっている。
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