牛肉需要の増加により肉牛飼養頭数も増加傾向を維持
インドネシア農業省畜産総局(DGLS)は、2007年における家畜などの飼養頭数(速報値)を公表した。飼養頭数が最も多いのはヤギで約1,487万頭、次に肉牛の約1,137万頭、羊の約986万頭、豚の約676万頭の順となっている。
肉牛の飼養頭数については、1997年に過去最高の1,194万頭となったが、その後漸減傾向が続いていた。しかし、2003年以降の飼養頭数は微増に転じており、2007年には1,100万頭台まで回復している。近年、肉牛の飼養頭数が増加傾向に転じた要因について、DGLSは牛肉需要の増加によるものと分析している。また、豚については、2001年以降総じて増加傾向が続いているが、アフリカ豚コレラなどの疾病の影響により、ここ数年飼養頭数が大きく変化している。
家きんについては、ブロイラーの飼養羽数が2003年以来の水準となる9億万羽台となった。同国では2003年8月頃に高病原性鳥インフルエンザの発生が確認されていたが、関連産業への影響を懸念した結果、政府による公表は2004年1月となり、対応の遅れによる事態の悪化を招いている。現在でも高病原性鳥インフルエンザの発生は確認されているが、鶏卵(キログラム当たり9,000ルピア、約115円:1ルピア=0.0128円)とともにブロイラー(同15,000ルピア、約192円)は、安価なタンパク源としての重要性は変わっていない。
畜産物平均価格
家畜および家きんの飼養頭羽数推移
牛肉需要量は今後も増加と予測
DGLSによれば、同国の2006年における牛肉需要量は約36万トンとされ、このうち国産牛肉供給量は約26万トンで国内自給率は72%となっている。残りの28%は豪州とニュージーランドから生体や牛肉として輸入されており、生体で輸入された牛はフィードロットで肥育されている。DGLSは、肉牛の飼養頭数は増加しているが、これは生体輸入された肥育素牛が増加しているためで、国産牛の飼育頭数は減少しているとしている。また、ルピア安により、これらの肥育素牛も割高感が強いため、国産牛の増頭が必要としている。
インドネシアは、今後も人口の増加が続くと予想され、食肉需要についても総じて増加傾向を示している。このうち、牛肉のシェアは約2割となっており、同国の牛肉需要も増加するものとみられている。DGLSは、牛肉需要量について、今後、毎年約4%ずつ需要が増加すると予想しており、2010年における牛肉需要量を約41万トンとしている。一方で、国産牛の供給量はやや増加するものと予想されているが、積極的な国産牛の生産振興を図らない場合には、国内需要を満たすために必要な生体や牛肉の輸入依存度が2007年の33.9%から2010年には37.4%まで上昇するとしている。
牛肉自給率向上に向けた取り組み
このため、同国政府は国産牛の生産振興を図り、2010年における牛肉の国内自給率を9割程度まで引き上げることを目標としている。そのため、技術研修による人的資源の育成、低利融資などによる小規模農家の育成強化、人工授精(AI)の推進や国内資源の有効活用を図るとしている。また、食品の安全性とともにハラル基準に適合した基準の作成に努めるとしている。
この国産牛の生産振興に当たっては、国内33州のうちジャワ島の東ジャワ州や中央ジャワ州、スマトラ島のアチェ州や南スマトラ州、スラウェシ島の南スラウェシ州など合計18州がその対象とされており、同国政府は肉牛の種畜改良を進めるため4,000頭の繁殖雌牛を導入するとしている。また、国内には2カ所の国立AIセンターが設置されているが、冷凍精液の需要に十分対応できていないため、総額2兆5千億ルピア(約320億円)の基金を造成の上、今後2年間でAIの普及促進に努めるとしている。
ただし、同国における国産牛の生産振興は、過去にも同様の取り組みが実施されてきたが、予算不足や農家に対する技術的指導が不十分なこともあり、飼養頭数の増加に十分な成果が得られていない。政府の目標では、2009年以降にAIの普及促進の効果を期待しているが、ルピア安に加え飼料価格の高騰などもあり、政府が目標としている牛肉自給率の引き上げには、困難が予想される。
牛肉需給予測 (2007年作成版)
国産牛肉自給目標 (同)
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