米国農務省、2017年までの農産物需給予測を公表


 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)は2月12日、2017年までの農産物需給予測を公表した。毎年この時期に公表されるこの報告書では、今後10年間における米国の主要農産物の需給動向が示されており、今後、農業分野に関する議論が行われる際、指標の一つとして活用されることとなる。今回は、この報告書の中から、主要畜産物に関する2017年までの需給予測の概要について報告する。


食肉生産量は当面の間、飼料コスト高などにより減速の見込み

 ERSによると、米国における主要な食肉の生産量は、2008年以降の5年間、飼料コスト高や収益性の悪化などにより、いずれも減少傾向で推移するものと見込まれている。しかし、その後の5年間では、堅調な国内需要や輸出の拡大などにより食肉価格が引き上げられ、収益性の改善が見込まれることから、生産量は緩やかに回復するものと予測されている。

 個別品目ごとに見ると、牛肉の生産量は、近年における穀物価格の高騰や干ばつの影響により、牛の飼養頭数の回復が遅れていることから、2010年まで減少傾向で推移するとされている。2011年以降は、収益性の改善に伴う牛群の再構築や、1頭当たりのと体重量の増加などにより、2017年度まで緩やかに増加するとされているが、同局が昨年公表した中期予測と比べ、2012年以降については2〜4%下方修正されている。

 また、豚肉の生産量についても、2011年までは減少傾向で推移するものの、2012年以降は、肥育豚価格の上昇に伴う養豚経営の改善や、高水準のカナダ産生体豚の輸入が見込まれることから、毎年増加傾向で推移し、2017年では2007年水準を1割程度上回るものと見込まれている。一方、鶏肉生産量は、2008年以降継続的に前年を上回って推移すると見込まれているが、2009〜2013年にかけては、飼料コスト高へ対応するための生産調整が行われ、生産量の増加幅は比較的低水準にとどまるものとされている。


生産の減速と輸出の拡大が価格の上昇要因となり食肉消費は減少

 このように、食肉全体の生産量が当面の間減速傾向で推移する中、近年、安定的に推移してきた米国内における食肉消費にも影響が及ぶと予測されている。家きん肉などを含めた食肉全体の1人当たりの消費量は、2008年こそ前年比0.2%増(221.5ポンド:100.5キログラム)と前年とほぼ同水準となるものの、その後、生産減による小売価格の上昇により毎年前年を下回って推移し、2013年には2008年に比べて3%強落ち込むもの(214.1ポンド:97.1キログラム)と見込まれている。なお、2014年以降は、生産増などにより、食肉消費は緩やかに回復するものとされている。

 また、生産減に加え、輸出の増大も食肉の小売価格の上昇要因の一つとされている。主要な食肉の輸出量は、継続的なドル安傾向や開発途上国における経済成長などにより、2017年まで増加傾向で推移すると見込まれており、2017年の輸出量は、2007年水準を牛肉で88%、豚肉で39%、鶏肉で15%程度それぞれ上回るものとされている。

 なお、食肉価格は、生産が全体的に減速傾向で推移するため、今回の予測期間を通じて、比較的強含みで推移するものと予測されている。ちなみに、2017年の主要な食肉小売価格は、2007年水準をそれぞれ2割程度上回るものとされている。

米国における畜産物需給の中期見通し(2008年2月米国農務省公表)


生乳は生産・消費ともに増加、価格は堅調の見込み

 ERSによると、2007年における生産者乳価およびチーズ・脱脂粉乳などの乳製品価格は、豪州の干ばつの影響やEUの政策的要因など国際的な乳製品をめぐる需給動向により、歴史的な高水準で推移したとされている。また、同局では、この傾向は、2008年まで継続するものと見込んでいる。

 生乳生産量は、高水準で推移する生産者乳価が乳牛の飼養規模の拡大を後押しし、また、規模拡大の進展により1頭当たりの乳量が増加することから、2017年まで一貫して増加傾向で推移するものと見込まれている。しかし、その増加幅は、2008〜2009年にかけて大きく拡大した後、2010年以降は、乳牛飼養頭数の緩やかな減少により縮小するものとされている。

 また、チーズおよび外食産業向け需要の拡大などにより、生乳需要については、増加傾向で推移するものとされているが、飲用向け生乳の1人当たり消費量は、引き続き緩やかな減少傾向で推移するものと見込まれている。

 なお、生産者乳価については、生産増などにより2009年にいったん落ち込むが、その後2017年まで再び上昇基調で推移するものと予測されている。


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