EUの2008年の牛肉生産量、わずかに減少の予測


◇絵でみる需給動向◇


2008年は前年比0.9%減の796万トンの予測

 EUでは、生乳クオータ制度による生乳生産拡大の制限や、生産と切り離した直接支払いの導入などにより牛飼養頭数は近年減少傾向で推移しており、その結果、牛肉生産量も減少傾向で推移している。特に、牛肉供給の約3分の2を占める乳用牛については、加盟国別のクオータが毎年ほぼ同水準で推移する中、一頭当たりの生乳生産量が増加してきた結果、搾乳牛頭数が減少し、近年続いた乳価の低迷と併せ乳用牛群の縮小が続いていると考えられる。

 イギリス食肉家畜委員会(MLC)が公表した2008年の牛肉需給予測によれば、2008年のEU27カ国の牛肉生産量は、0.9%減の796万トン(枝肉換算ベース)となり、2007年に続き、前年をわずかに減少するものと予測している。

EU27カ国の牛肉需給の推移


主要国の状況

・フランス
 2007年5月センサスの牛飼養頭数は、乳用牛は減少を続けているものの、肉用牛の増加がこれを上回った結果、5年ぶりに増加に転じている(詳細は「畜産の情報(海外編)」2007年11月号参照)。特に1〜2歳齢の牛は前年同期比1.7%増となっているが、この要因の1つは、イタリアなどに輸出される肥育素牛がブルータングの影響で農場に保留された影響と考えられる。現在、ブルータングは、同国の主要肉用牛産地である中央部にも広がっており、移動制限による肥育素牛の輸出頭数の減少が同国の牛肉生産をさらに押し上げる可能性がある。

・ドイツ
 2007年5月センサスの牛飼養頭数は、乳用牛の減少幅が縮小し、また肉用牛が増加した結果、減少率は0.5%にとどまっている。これは、2007年の好調な乳価を背景とした生乳生産意欲の増加が考えられる。2008年は、生乳生産のために乳用繁殖牛の更新が延長されると見込まれることから、牛肉生産については引き続き減少するものと考えられる。

・イタリア
 2008年の牛肉生産は、特にフランスからの肥育素牛の輸入動向に影響を受けると見られるが、ブルータング発生によるフランスからの肥育素牛の輸入減少、飼料費高騰による肥育経営の悪化などから、現時点では減少すると考えられる。

・イギリス
 2007年の牛肉生産量は、口蹄疫やブルータングによる一時的な輸出制限措置前の2007年前半は、牛肉輸出が好調であり、その結果、雌牛のと畜頭数が前年比37%と大幅に増加したことなどにより全体で前年比約5%増加した。2008年は、雌牛のと畜が前年に比べ減少すると見込まれること、飼料価格の高騰を背景に枝肉重量が減少するなどの要因により、牛肉生産は減少すると考えられる。


ブラジル産牛肉の輸入停止の影響

 EUは2007年12月、ブラジルの個体識別制度などの運用に問題があるとして、2008年2月以降、EU側の求める衛生水準に達した農場由来の牛肉のみEUへの輸出を可能とする決定を行った。本件に関しては、ブラジル政府の作成した輸出可能農場リストを2008年1月末の時点でEU側が採用しないとしたことから、当面ブラジル産のチルド・フローズン牛肉のEU向け輸出は一時停止となった(詳細は「海外駐在員情報(2008年2月5日号)」参照)。

 今回の措置では牛肉調製品や2008年1月末までに輸出された牛肉は対象とならないが、EUの輸入牛肉の6割以上はブラジルに頼っており、輸入停止が長期間続く場合、同国からの牛肉調製品の輸入を増加させ対応することが考えられる。加えて、域内の牛肉価格が上昇すれば、EUの牛肉生産の面から見ると価格上昇が追い風となり生産増加につながる可能性が考えられる。

EUの牛肉輸入量


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