LIPC WEEKLY

NZ:注目される南島の酪農


    

  【シドニー駐在員 鈴木 稔 2月8日発】 好調な酪農の国際市況を反映

し、ニュージーランドの酪農は急速な拡大を続けているが、とりわけ南島での拡

大は目覚ましいものがある。最近の農業省の調査でも、南島農家の羊から酪農へ

の転換志向は強いとの結果が出ており、ニュージーランドの酪農の将来を予測す

る上で、南島の動向が注目される。



 従来、ニュージーランドの酪農は北島の気候と土壌の良い北半分の地域を中心

として展開されてきた。



 これに対し、南島では畜産といえば羊が中心であり、一部で肉用牛と鹿が飼養

され、酪農は飼養頭数、戸数ともニュージーランド全体の数パーセントを占める

に過ぎなかった。



 ところが、近年の酪農好況は、伝統的酪農地帯の北島よりもむしろ、南島で酪

農ブームを巻き起こしている。



 ニュージーランドでは酪農家戸数は、92/93年度以降増加傾向で推移し、

94/95年度は14,649戸となり、この2年間で191戸増加している。

一方、この間に南島の酪農家戸数は197戸増加し、1,725戸となった。



 南島の酪農家戸数はシェア的には、まだ全体の約12%に過ぎないが、この2

年間の全体酪農家戸数の増加が全て南島の戸数増加につながっている。



 また、南島での搾乳牛の飼養頭数は、この2年間に28万8千頭から43万頭

へと実に約50%増加している。



 南島で酪農が急拡大している国内要因としては、@酪農以外の畜産の経営環境

が芳しくないため農家の酪農への転換意欲が強いこと、A人口の集中する北島で

は土地の値上がりが顕著なため、酪農への転換、規模拡大をするにも土地の制約、

資金負担が大きいこと、Bこれに対し南島は地価が安く、農地も豊富なこと、な

どが挙げられる。



 先頃、農業省が南島の北半分の地域の農家の今後5年の意向調査を実施したが、

その結果、14%の農家が羊の飼養頭数を減らすと回答し、羊を増やすとした農

家(7%)を大きく上回った。牛については増やすとした農家が11%で、減ら

すとした農家(7%)を上回った。また、8%の農家が酪農の拡大あるいは酪農

への転換の意向を示している。



 調査地域には、酪農不適地も含まれ、また、自らの意向を実現するために必要

となる資本の蓄積がない農家も多いが、この結果は、南島農民の強い酪農志向を

反映するものとして興味深い。



 南島には南部だけでも今でも100万頭の乳牛飼養能力(土地)があると言わ

れているだけに、農家の酪農志向と南島の潜在能力を考え合わせると、南島での

酪農拡大はしばらく続くものとみられるが、ニュージーランド酪農の将来規模を

占う上でもその動向が注目される。




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