LIPC WEEKLY


フィリピン、関税化後の豚、鶏肉の輸入は低調


 【シンガポール駐在員 末國 富雄 11月7日発】 フィリピンは、今年、世
界貿易機関(WTO)体制の下での畜産物の関税化を実施した。その結果、豚・
鶏肉は、予想に反し現在までの輸入は低調である。国内産の価格が、関税を含む輸
入品に対して競合し得る水準にあることが原因とされている。また、ウルグアイ・
ラウンド(UR)合意前の92年に関税化された牛肉は、ミニマムアクセスによ
る関税割当制となったことから、前年よりも輸入量は減少し、国内での生産が促
進されつつある。

  フィリピンは、畜産物の関税化とMAVの設定をめぐって、今春若干の混乱は
あったものの、期限間際でWTO体制に移行した。今年の食肉のMAVの一次(枠
内)および二次(枠外)関税率を示すと、以下の表の通りとなっている。

   品 目     MAV(トン)   一次(%)   二次(%)
   牛 肉     21,131      30       80
   豚 肉     49,985      30      100
  家きん肉    2,200      50      100

  同国の豚肉と家きん肉は、これまで輸入数量割当制度の下に置かれていたたた
め、関税化後には安い輸入肉で国内市場があふれ、国内の養豚・養鶏業は壊滅的
な影響を受けることが懸念されていた。その背景には、UR合意でMAV数量の計
算を誤り、過大な数値を約束させられてしまったという農業省側の後悔があると
いわれる。

  ところが、実際にフタを開けてみると、今年10月中旬までに輸入された豚肉
数量は、1,366トン、MAVの3%でしかない。また、家きん肉に関しては
471トンであるが、すべては高級ホテルや中華レストラン向けの七面鳥や北京
ダックで、鶏肉はゼロである。さらに、95年の輸入量を見ても豚肉が約1千ト
ン、鶏肉が190トンであるところから、移行後もほとんど変化が見られない。
現行制度の、特に一次関税率が国内生産を拡大するため十分な効果を上げている
といえよう。関税局では、この原因について、国内価格が輸入品の価格(CIF
+関税率相当額)より低いためとしている。ちなみに、96年1〜8月の首都マ
ニラの卸売価格は、1kg当たり豚肉(1級品)が78ペソ(1ペソ=約4円)、
鶏肉(ブロイラー)が44ペソ、牛肉(1級品)が90ペソとなっている。

  また、牛肉に関しては前年よりも輸入が減少している。牛肉は92年の関税化
以降、大量の牛肉と肥育用素牛が主にオーストラリアから輸入され続けてきた。

  品目       93年    94年    95年
  素牛(頭)   83,187   103,174   167,187
  牛肉(トン)   17,895    36,968    44,189

  96年の素牛輸入頭数は今のところ不明であるが、牛肉は10月中旬までに
15,500トンが輸入されており、MAV数量が2万トン余りであることから、
不足分は国内生産の増加と肥育素牛の輸入増加によって対応されつつあると思わ
れる。フィリピンが肥育牛の増産に力を入れていることは、農業省の作成した中
期農業開発計画(93〜98年)からも明らかである。全体予算額1,814億
ペソのうち牛繁殖計画だけに440億ペソを充てるという偏重ぶりであるが、
その効果が表れることを期待したいものである。

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