LIPC WEEKLY
【デンバー駐在員 藤野 哲也 10月3日発】 ミネソタ州にあるD社は、米 農務省食品安全検査局(FSIS)より個体識別手段としてのマイクロチップの 埋め込み場所について認定を受けたと発表した。これにより、今後、米国におけ るマイクロチップの利用促進が図られるものと関係者は期待を寄せている。 現在、家畜の個体識別には、いろいろな方法が用いられているが、その中でも プラスチック製の耳標が最も一般的な手段として利用されている。個体識別の本 来の目的は、家畜衛生対策の要素が大きいが、それ以外にも、飼養管理や経営管 理に利用可能なだけでなく、改良増殖など多くの分野への活用が期待されている。 中でも、最新技術として、さまざまなデータの管理が可能となるマイクロチッ プの利用による個体識別が注目されている。マイクロチップの実用化には、コス ト的な問題などが残っているものの、いろいろな試みが世界各国で行われている。 また、併せてISO(国際標準化機構)主導によりマイクロチップの統一基準作り が進められているところである。 同社によると、先の保健社会福祉省食品医薬品局(FDA)の牛などへのマイ クロチップの埋込み承認を受けて、FSISが食べることのできない組織である @耳根の軟骨の皮下部、A足のけ爪の上の皮下部、B豚においては、眼かの下の 皮下部、C馬においては、うなじのじん帯の四つを埋め込み可能の場所として認 定を受けたと発表した。 同社は、動物の個体識別のためのアンテナとマイクロチップを埋め込んだ小型 のトランスポンダ(データ記憶装置)のパイオニア的存在の一つであり、1984 年に初めてトランスポンダを動物に埋め込んだ。 しかしながら、FDAによりトランスポンダをと畜時に回収することが義務付 けられていたため、その利用はごく限られたものであった。その後、FDAは、 羊のスクレピーの衛生対策のため、この規則を廃止し、さらに、95年にはメタ ル製のトランスポンダの動物の非可食部分への埋め込みを解禁すると表明した。 このことから、今回のFSISの認定に至った。 今回の発表により、同社は、馬伝染性貧血などの疾病対策に利用するためのマ イクロチップ需要が増えると見込んでいる。 加えて、耳標はもとよりマイクロチップの利用による個体識別の需要は、ペッ トや家畜に加えて、回遊魚や野生動物の生態調査などにも及ぶ幅広いものになる と予想されている。今後、国の補助による研究開発が必要であるとの前提ながら も、マイクロチップに寄せる関係者の熱い期待は相当のもののようである。
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