LIPC WEEKLY
【デンバー駐在員 藤野 哲也 10月10日発】 ニューヨークのコーヒー・砂 糖・ココア取引所(CSCE)では、10月15日からバターの先物取引を、シ カゴ・マーカンタイル取引所(CME)に引き続いて実施する。バターの先物取 引は、CMEが76年に廃止して以来、実に20年ぶりの復活となった。 現在、CSCEにおける乳製品の先物取引としては、脱脂粉乳とチェダーチー ズが上場されているが、これに加えて、10月15日からバターが上場されるこ とになった。バターの先物取引上場は、今年の9月5日にCMEが20年ぶりに 復活させたことに続くものである。 CMEのバターの先物取引は1919年に開始されたが、政府の乳製品価格支 持制度の発足によりバターの卸売価格が加工原料乳の支持価格とほとんど同水準 で推移したため、価格の変動が少なく、取引量も少なかったため、1976年以 降は、現物取引だけが行われていた。 しかしながら、最近のバターの生産量は、3年連続で減少し、さらに、本年に 入っても生乳生産量の減少を反映して引き続き、減少傾向で推移している。一方、 消費量は、近年減少傾向で推移していたが、小売価格の低下などを受けてわずか ながら増加傾向に転じた。この結果、バターの政府在庫量は95年8月には底を つき、現在もゼロの状態が続いている。 また、バターの卸売価格は、94年まで低下傾向で推移したが、その後、需給 情勢を反映して、価格は上昇に転じた。一方、加工原料乳の支持価格は、96年 になって引き上げられたものの、それ以前は引き下げが続いたため、支持価格と 卸売価格にかい離が生じていた。なお、今年に入ってからはバター価格の上昇に よりその傾向が一層顕著なものとなっており、9月の卸売価格は、支持価格を1 24%上回る145.5セント/ポンド(グレードA、シカゴ地区)となり、先 物取引への期待は高まっている。 CSCEでの、先物取引の対象となるバターは、USDAのグレードAA規格 (有塩)のもので、取引単位は1万ポンド、引渡単位は4万ポンドである。また、 取引限月(デリバリー月)は、2、4、6、8、10、12月の6限月となって いる。 CMEが、バターの先物取引を中止した際、その理由として、先物取引の持つ 価格変動のためのリスクヘッジと、乳製品の価格支持制度の趣旨が類似している からだという関係者の説明があったが、96年農業法による支持価格水準の漸減 と2000年からの価格支持制度の廃止は、先物取引による価格変動リスク回避 の意義を大きくするものと考えられている。今回のバターの先物上場の復活に、 関係者がどのような反応を示すのか興味深いところである。
元のページに戻る