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【デンバー駐在員 堀口 明 1月23日発】 米農務省(USDA)経済調査 局(ERS)と農業流通局(AMS)は、牛乳・乳製品の一般需要拡大事業の効 果に関する調査を共同で実施し、その結果の概要を発表した。これによれば、事 業は成果を上げており、生乳生産者に投資額を上回る利益をもたらしているとし ている。 チェックオフ事業と呼ばれる米国の農産物の一般需要拡大事業は、牛肉、豚肉、 牛乳・乳製品などの畜産物や野菜・果物などについて広く実施されている。事業 は、それぞれが法律制度として行われており、事業財源は農産物の流通過程で生 産者などから義務的に徴収される賦課金(チェックオフ資金)が用いられている。 牛乳・乳製品に関するチェックオフ事業には、生乳生産者から生乳100ポン ド当たり15セントの割合で賦課金を徴収して実施されている酪農チェックオフ 事業と、飲用牛乳処理業者から20セントを徴収して実施されている飲用牛乳チ ェックオフ事業の2種類がある。 USDAが実施した牛乳・乳製品のチェックオフ事業の効果に関する調査は、 米国総人口の43%をカバーする12の地域を対象に行われた。効果測定の方法 は、事業の実施されていなかった78年12月から84年8月の間と事業実施後 の84年9月から95年9月の間を比較する形で行われた。また、この調査では 特に、一般需要拡大事業が、@飲用牛乳の消費拡大に貢献したか、Aチーズ消費 拡大に貢献したか、B生乳生産者にどれだけの見返り利益をもたらしたか、の3 点に焦点を当てて行われた。 今回の報告では、事業の実施により、実施しなかった場合と比べ、調査地域の 11年間の飲用牛乳販売量が97億ポンド(同地域の販売量の約4%)増加した と推計している。チーズについては、家庭消費向けの販売について調査し、プロ セスチーズが4億5千万ポンド(販売量の約5%)、ナチュラルチーズが7千万 ポンド(販売量の約0.5%)、合計で5億2千万ポンド(販売量の約2%)の 販売量の増加があったとしている。また、販売数量の増加などによる収入ベース の生産者への見返りについては、11年間の平均乳価の12.95ドル/100 ポンドと、事業を実施しなかったと想定した場合の平均推計乳価12.52ドル /100ポンドとの差に当たる100ポンド当たり43セントが生産者の利益と なったとしている。 USDAは、これらの結果から、牛乳・乳製品のチェックオフ事業は一定の成 果を上げているとの見方を示している。 チェックオフ事業については、事業効果を疑問視する者がいたり、制度そのも のが憲法違反であるなどの根強い反対もあるが、主要な事業については、大方の 生産者からの支持を得ている。
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