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【ブラッセル駐在員 東郷 行雄 5月22日発】 欧州統計局は、このほど96年 におけるEUの農業労働者数の調査結果を発表した。これによるとEU15カ国の 農業労働者数は前年を3.2%下回ったものとなっており、80年代後半から続い ていた減少傾向の中では最も低い減少率となっている。 EUの農業労働者数は、AWU(年間労働単位)という計測方法で集計が行われ ており、1AWUは、1人の労働者が1年間フルタイムで農業に従事したことを表 す。 今回発表されたEU15カ国の農業労働者数は、96年現在で700万5千AW Uと前年を約23万AWU下回ったものとなっており、このうち家族労働者数は、 533万AWU(前年比−3.7%)と全体の76%を占めている。 農業労働者数を国別にみると、イタリア(170万AWU)、フランス(103 万AWU)、スペイン(96万AWU)の3カ国でEU全体の過半数を超えており、 また前年との比較では、EU15カ国すべてで前年より減少しており、スペイン (−5.9%)、オーストリア(−4.8%)、フィンランド(−4.4%)など 6カ国がEU平均を下回ったものとなっている。 さらに5年前の91年との比較では、91年の農業労働者数862.3万AWU に対し96年は約2割の減少となっている。 農業労働者数のうち家族労働者の割合が最も高い国は、フィンランド(97%)、 アイルランド(91%)、オーストリア(88%)で、反対に最も低いのはイギ リス(65%)、イタリア(68%)、オランダ(70%)であり、EU平均では 76%となっている。 家族労働者数は、農業労働者数と同様に15カ国すべてで前年を下回っており、 オーストリア(−5.6%)、スペイン(−5.4%)、ルクセンブルグ(−4.7%) の減少率が最も大きく、EU平均では3.7%の減少となっている。 一方、非家族労働者数の動きは、国によりばらつきがあり、ギリシャ(+5.9%)、 オランダ(+5.2%)など5カ国は前年を上回っており、反対に減少率が大き かったのは、スペイン(−7.2%)、デンマーク(−3.6%)などで、EU平 均では1.7%の減少となっている。 こうした結果について欧州統計局は、労働需要がその年の生産量や季節によって 変化する果物や野菜生産農家においては、非家族労働者の弾力的な雇用が行われて いる点を考慮すべきであるとしているほか、家族労働者については、高齢者の農業 経営からの引退や女性労働者の他の産業部門への従事等により家族以外の労働者の 雇用が増加しているなど構造的な変化がみられているとしている。 また、多くの農家、特に小規模な農家では、新技術の導入や農業機械の更新のた めの投資を行うよりも、むしろ、特定の専門的な作業を担ってもらうために契約に 基づく非家族労働者を雇用する形態が増えてきていると分析している。
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