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【ブラッセル駐在員 井田 俊二 8月28日発】EU統計局は、96年の農産物 生産者価格指数を発表した。これによると、農産物全体では前年を2.7%下回っ た。なお、部門別にみると、耕種部門は3.7%、畜産部門では1.5%下回る結 果となった。 EU統計局が発表した96年の農産物生産者価格指数(90年=100とした実 質価格(インフレ率調整後の数値)、以下同じ)は、83.3となり、前年を2. 7%下回った。農産物生産者価格指数は、90年以降低落傾向にあり、94、95 年は一段落したものの96年は再び下落する結果となった。 部門別にみると、耕種部門では3.9%下回ったが、これは、ジャガイモを主と した根菜作物が94、95年の異常な高騰の反動で前年より26.0%と大幅に低 下したこと等が要因である。 一方、畜産部門をみると、90年以来一貫して低落傾向にあり、96年は全体で 1.5%下回った。種類別にみると、子牛(−14.3%)および子牛を除く牛 (−15.0%)の低下が著しい。これは、96年3月に発生した牛海綿状脳症 (BSE)の影響により、牛肉に対する消費者需要が急激に落ち込んだことが一つ の要因として挙げられる。これとは対照的に、家きん(+4.7%)、豚(+8.4 %)および羊(+11.0%)がいずれも上昇しているが、これは落ち込んだ牛肉 需要が、これらの肉畜の需要に移行したためとみられる。また、生乳は一貫して低 落傾向が続いており、96年は前年を2.7%下回った。 一方、鶏卵については、94年(−9.0%)、95年(−9.6%)の2年連 続の価格下落の反動で、96年は17.9%と大幅に上昇した。 次に、農産物全体について加盟国別にみると、フィンランドでは14.8%の下 落となり、昨年(−26.1%)と比較して低下率は縮小したものの、2年続けて 大幅な下落となった。これは、95年のEU加盟後、農産物生産者価格をEU域内 と同等の水準に引き下げるなど、それまで取っていた農家保護政策の見直しを図っ た結果であるとみられる。しかしながら、同じ年にEUに加盟したオーストリア (−1.2%)、スウエーデン(−4.6%)と比較すると、低下率が大きく、他 の2国に比べてEU加盟後の国内農産物生産者価格に及ぼした影響が長期化してい る。 また、同時に発表された、原・材料資材の購入価格指数をみると、前年を1.2 %上回った。その結果、農産物生産者価格指数(アウトプット)を原・材料資材の 購入価格指数(インプット)で除した値の指数は88.6で、前年より3.8%下 回り、近年で最低の水準となった。今回の報告は、生産者にとって数字の上では、 原料高の製品安という状況を反映した結果となったといえる。
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