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rBSTフリー表示をめぐる裁判が司法決着


【デンバー駐在員 藤野 哲也 8月28日発】 乳業会社が合同で、rBST
(合成牛成長ホルモン)を使用していない生乳から製造された乳製品にその旨を表
示できないのは、消費者への情報提供の権利を犯すものだとして、イリノイ州を訴
えていた裁判は、“rBSTフリー”という表現をしないことを条件に司法決着が
図られた。

 昨年、アイスクリームやヨーグルトを製造している乳業会社4社が合同で、rB
STを使用していない生乳を使用した乳製品にその旨を表示できないのは、消費者
へ商品に関する情報を提供する権利を犯すものだとして、イリノイ州を訴えていた。

 この訴えについて、このほど両者の間で司法決着が図られ、イリノイ州は、BS
T等のホルモン剤を使用しない乳製品会社に対して、“rBSTフリー”という明
確な表示は認めないことを条件に、rBSTを使用していないことを内容とするラ
ベル表示を認めることとなった。

 rBSTは、大手化学・製薬会社が開発した合成成長ホルモンの一種で、乳牛の
泌乳量を10〜15%程度高めることができると言われている。このホルモン剤は、
93年11月に米食品医薬品局(FDA)が使用を許可し、94年2月から販売が
開始された。認可を行ったFDAでは、BSTは、通常の牛の生理過程においても
生成されるものであり、人工的に製造されたrBSTも人体に悪影響はないとの立
場を取っている。なお、97年現在、rBSTについては、16%程度の搾乳牛に
投与されているものと推計されており、当初見込まれたほど普及していないのが現
状である。

 ところで、rBSTの表示問題については、販売当初から関心が高く、昨年には、
牛乳・乳製品にrBST使用に関する表示を義務付けたバーモント州の規則が、連
邦地方裁判所の裁定で違法とされ、その表示規則の廃止が決定されていた。これは、
裁判所がrBSTを使用したものと、これを使用していないものから生産された牛
乳・乳製品の相違を明らかにできない以上、その表示区分も正当化できない、との
判断に基づくものであった。

 今回の裁判は、バーモント州の場合とは全く逆のケースで、いわば乳製品の差別
化のために、rBSTを使用していないことを表示に盛り込みたいとの訴えであっ
た。今般の合意により、ある乳業会社は、「私達は、合成牛成長ホルモンに反対し
ます。当製品に生乳を供給する酪農家は、rBGH(=rBST)を牛に投与しな
いことを誓います。」という内容の文面を製品のラベルに盛り込むことを予定して
いる。

 今回の決定は、遺伝子組替え食品等の表示方法のあり方に関する今後の論議にも
影響を与えるものとみられている。



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