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【デンバー駐在員 本郷 秀毅 9月4日発】USDAは8月28日、食肉・家き ん肉に係る衛生規則の改善案を発表した。また、翌29日、史上最大の製品の自主 回収措置が講じられることとなった冷凍牛肉ハンバーガーパティによる食中毒事件 を契機に、食肉等の安全性を強化するための法案を議会に提出すると発表した。 食肉加工メーカー・ハドソンフーズ社(アーカンソー州)の生産した冷凍牛肉ハ ンバーガーパティが原因とみられる病原性大腸菌O−157による食中毒事件は、 その後、患者数を17人に増やし、製品の回収規模は、史上最大の2,500万ポ ンド(約1万1千トン)に拡大されることとなった。さらに、問題となった工場に ついては、食肉処理・加工メーカー最大手のIBP社に売却するとともに、家きん 肉部門で業界第5位の地位を占めていたハドソンフーズ社本体についても、家きん 肉業界最大手のタイソンフーズ社に買収される見通しとなった。 こうした中、米農務省(USDA)は8月28日、現在検討中の食品の安全性確 保に関する規則の改善および食肉・家きん肉検査の近代化努力の一環として、2つ の規則の改善案を発表した。 1つは、これまで食肉と家きん肉について別々に定められていた衛生規則を1つ の規則に統合するとともに、現行の慣例による衛生規則を達成すべき基準に置き換 え、よりHACCPに準拠したものにしようとするものである。もう1つは、施設 の青写真、図面、器具機材および品質管理計画に関する事前承認手続きを廃止する ことにより、業界の自主性と製造責任を拡大しようとするものである。 さらに、USDAは8月29日、今回の食中毒事件を契機に、USDAの権限の 強化による、食肉の安全性を強化するための法案を議会に提出すると発表した。同 法案によれば、USDAに与えられる権限は以下の3点である。 @ 公衆衛生に危害をもたらす可能性のある粗悪品および不当表示された食肉・ 家きん肉の流通の停止・回収の命令 A 連邦食肉検査法または連邦家きん肉製品検査法に故意にまたは繰り返し違反した 場合、USDAによる検査の拒否または撤回(実質的に工場の操業停止を意味する。) B 連邦食肉検査法または連邦家きん肉製品検査法の違反者に対する金銭による民事 罰の賦課(1日当たり最大10万ドル=約1千2百万円) 今回のUSDAによる法案の発表に対して、食肉関係団体は、現行法下においても 実質的に製品の回収や厳しい刑事的な制裁が行えること、食中毒の防止にではなく罰 則に力点を置いたものであること、などとして反発している。
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