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【シンガポール駐在員 外山 高士 4月 9日発】 フィリピンでは、児童の栄 養失調と飢えの対策として、学乳事業を拡充する動きがみられる。同国における貧 困による子供の栄養不良を撲滅させる計画の一部であるが、その事業実施が期待さ れている。 フィリピンでは、小学校に通学する児童に対する学乳事業が拡充される動きがみ られる。野党第一党であるラバン党の党首で、上院議会農業委員長のアンガラ上院 議員の発言で、98年度予算に全国的な学乳事業として723万ペソ(1ペソ= 3.71円)を計上させることを明らかにしたものである。 同国は、近年、経済成長率5%を超える目覚ましい経済発展を遂げており、96年 においても、経済成長率は6.8%となっている。しかし、一人当たり国内総生産 (GDP)は、95年にやっと1千ドルを超えたばかりで、96年でも1,162 ドルと、東南アジアで1番高いシンガポールの約30分の1に過ぎず、かなり低い 水準となっている。畜産物の消費量もまだ低い水準にあり、95年の牛乳・乳製品 の1人当たり消費量は、生乳換算で21.1sと、日本の4分の1程度しかない状 況となっている。 また、貧富の差が大きく、学校に通学できても、朝食をとってこれない児童や、 貧困により食事を満足にとれない子供の栄養不良が大きな問題となっている。アジ ア開発銀行の資料によると、0歳から6歳までの子供の8.4%、7歳から12歳 までの子供の7%が栄養失調であると言われており、かなり深刻な状況となってい る。 このため同国では、一部地域で実施されていた学乳事業を、97年より民間慈善 団体が中心となって、教育文化スポーツ省の後援による全国規模での小学校通学児 童の栄養状態改善を目的とする学乳事業として開始した。昨年においては、8地域 の12以上の主要都市において、義務教育となっている小学校のうち、1年生の児 童を対象に、6ヵ月間1日1パックのLL牛乳を無償提供する形で実施した。今回、 計上される予算では、16の地域の1,000校の小学校を対象に、児童1人当た り5ペソで、120日分の補助を行うものとなっており、対象児童などが昨年に比 べ大幅に拡充されることとなる。 同国では、貧困による子供の栄養不良は長年の課題となっており、今回の事業拡 充はその対策の一部とみられている。同事業は、数百万人いるといわれる児童の、 栄養不良と飢えを解消するものとして、その実施が大いに期待されている。
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