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【シンガポール駐在員 伊藤 憲一 7月30日発】タイ鶏肉業界団体がまとめ た98年上半期の冷凍鶏肉の輸出数量は、EU向けの引き続く大幅な増加に加え、 日本向けが、昨年12月以降、大幅に拡大したことにより、前年同期比42%の 大幅な増加となった。 タイブロイラー加工輸出業者協会が取りまとめた98年6月の冷凍鶏肉の輸出 数量(速報値)は、1万7千9百トンで前年同月比41%の大幅な増加となった。 これを地域別にみると、日本向けが1万1千5百トンで同41%増、香港が209 トンで同99%増、韓国が167トンで前年同期の約6倍となり、アジア全体で は、1万3千2百トンで同45%の増加となった。EU向けは、第1四半期の前 年同期比約7割増のような驚異的な伸びではなかったものの、98年6月は4千 1百トンで同16%増となり引き続き拡大傾向で推移している。なお、EU以外 の東欧を含むヨーロッパ地域およびこれまで比較的輸出の少なかった中近東地域 への輸出が増加した。 この結果、98年上半期の冷凍鶏肉の輸出数量は、10万トン、前年同期比42 %増となり大幅に増加した。このうち、アジア地域では、日本向けが昨年12月 以降の増加が続いたことにより6万1千1百トンで同32%増となった。また、 中国は前年同期の346トンに対し98年上半期は4千1百トンと約12倍にな ったことが注目される。その他に韓国が同53%増、香港が同51%増となり、 アジア全体では97年上半期の同1%減に対し、本年上半期では同39%の大幅 な増加となった。また、EU地域も、2万4千6百トンで同39%増となった。 国別ではドイツが1万1千9百トンで同90%増、昨年減少したイギリスは3千 トンで同86%増となり今期は大幅な増加となった。輸出量は少ないが今年に入 って増加が続いている中近東は、千トンで前期の約2倍の数量となっている。 これにより、98年上半期の日本向け輸出シェアは、日本以外のアジア諸国お よびEU以外のヨーロッパ地域の増加などにより、前年同期の66%から5ポイ ント低下し61%となった。 このような輸出の増加の主な要因は、@タイバーツ下落の恩恵を受け、日本向 け輸出価格が競合する中国の輸出価格と比べてかなり安価であったこと、A日本 の需要者が、円などの通貨の先行き不透明感などから大量に買い付けを行ったこ と、Bタイ産鶏肉のブランドがEUマーケットに定着してきていること、CEU が中国からの輸入を実質禁止しているため、高付加価値製品である皮なしむね肉 の輸入国がタイなどに限られていること、D引き続き、EUにおけるむね肉の需 要が高いことなどが挙げられる。 タイの輸出業者によると、98年の対日輸出数量は、今後においても円が軟調 に推移するとの見込みから、ライバル国である中国の人民元切り下げの脅威が解 消されていないこと、日本における景気の回復が遅れ、需要がさらに落ち込む恐 れがあることなどの不安要因はあるものの、冷凍鶏肉で前年の約3割増の約11 万トン、鶏肉調製品で約1割増の約4万トンと予測している。
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