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【ブラッセル駐在員 池田 一樹 12月11日発】EU委員会は、97年度の牛乳 乳製品の消費拡大キャンペーンの実施状況を取りまとめるとともに、来年度の方針 を理事会に報告した。このキャンペーンは、EUが費用を全額負担し継続的に実施 している。報告では、特に、スポーツ活動やその他のイベントを通じてのキャンペ ーンの効果が強調されている。
報告によると、97年度のキャンペーンでは、新聞雑誌、ラジオ、テレビといっ た一般的なマスメディアの利用が、従来同様多かったが、予算的には減少した。た だし、対象層である若者を完全にカバーできるテレビの利用は増加した。 一方、マルチメディアやインターネットといった新しい媒体の利用が急増してい る。また、情報を提供したり、新たな消費の場を開拓することを目的として、スポ ーツの利用が急増している。
スポーツイベントを通したキャンペーンは、フランス、デンマーク、ドイツなど 7加盟国で行われた。その数は数千に上り、牛乳とスポーツとを関連させて若者の 興味を引くような形で製品を展示し、牛乳の利点をアピールしたとされている。こ の結果、牛乳乳製品に対する新たなイメージや新たな消費パターンを生み出す効果 があったとし、若者の注目を牛乳に集めるために卓越したキャンペーン方法である と評している。
具体例としては、フランスでのヨット競技への後援が挙げられている。「乳製品 =ピュア−センセ−ション」とのコピーの下に、乳製品=ヨットのイメージを若者 に焼き付けることを目的として実施されている。これまで4千のヨット教室登録者 (80万人以上)を対象として実施され、10万回以上の試飲会が行なわれた。デ ンマークでは、「1日0.5リットルの牛乳で一生大丈夫」とのコピーの下で、サ ッカースクールなどで、若者のスポーツ飲料としてのイメージを生み出そうとして いる。他の消費拡大対策も相まって、デンマークでは牛乳消費が前年に比べて2% 増加している。
この他、ドイツでは、スポーツイベントに加えて、牛乳の高い栄養価値を漫画の キャラクターを使ってアピールするなどのキャンペーンを行った。この結果、18 際未満の子供を持つ家庭の乳製品消費量が前年に比べて1人当たりで4%増加した と報告されている。スペインでは「バルセロナミルク/健康週間」が開催され、展 示、討論会、試飲会などを行うとともに、学校へのパンフレットや教材の提供が行 われた。イタリアでは全国的に牛乳の無償配布や景品の配布が行われた。また、多 くの加盟国で、アルコール依存症や土曜の夜のダンスパーティー後の交通事故を減 らすために、このキャンペーンが利用されたとも報告されている。
98年度は、従来同様、25歳未満の若者、次いで妊婦や老人など特に栄養面で の配慮の必要な人々を対象として、ノンブランドでの牛乳乳製品消費の維持、拡大 を目的に実施される。予算は、前年と同程度の約1千万ECU(約14億円:1ECU= 140円)が見込まれている。個々のキャンペーンは、各国の実施主体が提出する 実施計画案を、EU委員会が検討して、選択する。この際、特にスポーツやその他 のイベントを通じたキャンペーン、疾病予防や栄養価値のピーアールを重視すると している。
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