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酪農制度改革案に大筋合意


【シドニー駐在員 野村 俊夫 12月10日発】豪州では、今月初め、酪農乳業界
の代表で構成される協議会において、生産者への十分な補償措置等を前提とした酪
農制度の改革案が大筋で合意された。これにより、加工原料乳制度の期限が切れる
2000年6月末に向けて、飲用乳制度の撤廃を含めた大幅な酪農制度改革が始動
することとなった。
  豪州では、今月2日、酪農乳業界の代表で構成される豪州酪農産業協議会
(ADIC)の総会が開催され、生産者への十分な補償措置を含めた次の諸条件を
整えることを前提として、連邦の加工原料乳制度と各州の飲用乳制度をともに撤廃
する方針について大筋の合意がなされた。同協議会は、来年4月頃には政府に具体
案を提出したいとしており、懸案の豪州酪農制度改革が、いよいよ本格的に始動す
ることとなった。
  今回の合意で条件として挙げられたのは次の7項目である。@生産者が新たな市
場環境に移行できるための十分な再建(補償)資金が準備されること、A当該資金
の生産者への配分方法に、すべての生産者組合が合意すること、B制度改革案の原
則に、すべての乳業セクターが合意すること、C各州政府が、飲用乳の価格支持・
供給規制の撤廃に合意すること、D再建資金の借入れを保証すると同時に、生乳処
理以降の流通段階で飲用乳から課徴金を徴収し、これをもって一定期間で当該借入
金を返済するシステムを設けること、E連邦政府の規制緩和政策の対策資金を酪農
乳業界の規制緩和に適用すること、F上記諸条件の合意後、連邦政府が業界と十分
な協議を行いつつ制度改革の法制化を進めること。
  豪州では、連邦政府によって、加工原料乳に対する価格補てん制度が実施されて
いる。同制度は2000年の6月末が期限とされており、加工原料乳の生産者は継
続を望んでいるものの、連邦政府は次期貿易交渉の観点から難色を示しており、ま
た、乳業側も、長期的な輸出競争力の低下を懸念して否定的な立場を取っている。
  一方、飲用向け生乳については、各州ごとに生産者乳価の支持制度が実施されて
おり、加工原料乳の約2倍の水準の最低乳価が設定されている。同制度は、連邦政
府による規制緩和政策に基づく見直しの対象とされており、飲用向け生乳生産者の
切実な懸念をよそに、規制撤廃を含む改革の圧力にさらされている。
  上記両制度の間には直接の関連はないものの、実質的には両制度によって国内の
生乳生産全体の収支バランスが保たれており、したがって、両制度の改革は切り離
して議論することはできない関係にある。
  こうした中で、今回の合意は、一定の条件付きながらも、生産者側を含めた業界
全体が両制度の撤廃を受け入れる方向を示唆したことを意味するだけに、その意義
は非常に大きいと言える。
  合意の詳しい内容は明らかにされていないが、関係者からの情報によると、
再建資金の総額は約10億〜12億豪ドル(750〜900億円:1豪ドル=75円)、
生産者への補償は一回限りで行われ、総額の約50%は豪州最大の酪農生産州であ
るビクトリア州の生産者に振り向けられるとされている。
 今後は、十分な再建資金の確保をめぐる連邦政府との交渉、生産者への補償金の
配分方法をめぐる生産者団体間の討議などが行われることになるが、一部の生産者
や組合系乳業メーカーは、まだ、両制度の存続を主張しているとも言われており、
今後の展開は予断を許さないものになると思われる。

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