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【デンバー駐在員 藤野 哲也 12月10日発】米・加両国政府は、12月4日、 米国産小麦および家畜のカナダへの市場アクセス機会の拡大などを内容とする農畜 産物市場開放対策について合意したと発表した。しかしながら、これを不満とする カナダ国境沿いの米国農民は、12月6日にカナダ産農畜産物の輸入に対する抗議 活動を再開した。
米国サウスダコタ州で、9月16日から開始されたカナダ産の生体牛、生体豚お よび穀物に対する輸入規制は、カナダ国境沿いの各州に波及したため、二国間の貿 易問題に関する協議を開催することを前提として、カナダが北米自由貿易協定(N AFTA)および世界貿易機関(WTO)協定に基づく協議の要請を撤回していた。
その後、約2ヵ月にわたる二国間協議の末、米・加両国政府は、12月4日、農 畜産物市場開放対策について合意したと発表した。合意内容は、主にカナダが米国 産農畜産物に対する市場アクセス機会の拡大を図るというものになっている。
畜産物関係では、@オーエスキー病が清浄である米国33州からの肥育豚輸出に 係る30日間の検疫の即時中止、A現在、米国ワシントンおよびモンタナ州を対象 として実施している北西部パイロットプログラムに基づく肥育素牛のカナダ向け輸 出の対象州を26州に拡大、Bカナダの動物衛生規則について、地域主義の観点か ら30ヶ月以内に見直し、C動物用医薬品の残留許容量などに関する両国統一基準 の策定などが挙げられている。
また、穀物関係では、@米国北部州などからカナダへの穀物の鉄道輸送解禁、 Aカーネル・バント(黒穂病)が清浄である米国14州からの小麦輸出に係る植物 検疫の免除、B米国モンタナ州、ノースダコタ州産小麦のカナダ向け輸出促進プロ グラムなどが挙げられている。
米農務省(USDA)および米通商代表部(USTR)は、「今回の対策はあく まで第1段階であり、両国間における農産物貿易問題を全て解決するものではない ものの、厳しい状況にある米国生産者にとっては朗報であり、今後ともカナダ農産 物市場の解放に向けて努力する」と発表した。
カナダ産農畜産物の輸入規制を行った5州の知事は、今回の対策を評価するとし ており、特にジャンクロウ・サウスダコタ州知事は、USTRが改善に向けて努力 し続けている限り、州としての規制措置は行わないとしている。また、米国の畜産 団体である全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)および全国豚肉生産者協議会 (NPPC)は、今回の対策はカナダへの家畜の輸出を促進するものであるとして 歓迎の意を示している。
しかしながら、カナダ国境沿いの米国の生産者などは、今回の対策がカナダ産農 産物の輸入規制につながらなかったことや、カナダのダンピング輸出に言及されて いないことを不服として、当初予定どおり、対策発表の2日後の12月6日に、モ ンタナ州スウィートグラスをはじめとするカナダ国境沿いの町で、農畜産物の輸入 抗議活動を再開した。
こうした事態を受けて、カナダ政府は、米国農民による輸入抗議活動の再開に対 して遺憾の意を表明するとともに、米連邦政府に対して必要な措置を講じるよう申 し入れを行った。
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