ALIC/WEEKLY
1.食肉業界の新体制が始動(豪州) 本年7月、豪州牛肉・羊肉業界の新体制が始動した。政府系特殊法人であった豪 州食肉畜産公社(AMLC)、豪州食肉研究公社(MRC)および食肉産業協議会 (MIC)の業界3団体が解散し、代わりに生産者からの課徴金に基づくミート・ ライブストック・オーストラリア(MLA)などの新組織が設立された。 新体制の 下では、畜種ごとの財政区分の明確化などに伴って各セクターの発言力が強化され、 業界全体の舵取りが難しくなるとみられているが、既に、MLAが試験的に実施し ている牛肉の食味保証制度(事業名ミート・スタンダード・オーストラリア:MS A)の継続・拡大にパッカー団体が難色を示すなどの事例が現れており、今後の動 向が注目されている。 2.酪農制度改革案に大筋合意(豪州) 酪農乳業界の代表で構成される豪州酪農産業協議会(ADIC)は、12月初旬、 年次総会を開催し、酪農生産者に十分な補償措置を講ずることや当該措置に業界全 体が同意することなどを前提として、2000年6月末に期限切れとなる連邦の加 工原料乳価格補てん制度と、規制緩和政策に基づく見直しの対象とされている各州 の飲用乳価格支持制度を、ともに撤廃する方向で大筋合意した。同協議会は、総額 10〜12億豪ドル(750〜900億円:1豪ドル=75円)とされる酪農生産 者への補償措置を含む具体案を、来年4月頃には政府に提出したいとしており、懸 案の酪農制度改革が、いよいよ本格的に始動することとなった。 3.保守連合辛勝、農業関係者は概ね歓迎(豪州) 10月3日に行われた豪州連邦議会上下院の同時選挙の結果、自由党と国民党によ る保守連合政権は、大幅に議席を失いながらも下院で過半数を維持した。農業団体 は、一部を除き、農産物貿易の一層の自由化を旗印とする保守連合の勝利を歓迎し ている。組閣に当たっては、地方農村部での支持挽回を狙い、公共サービスの拡充 などの地方振興策が明確に打ち出された。また、これまで農業や鉱物資源などを所 轄していた第一次産業エネルギー省から資源分野を切り離し、新たに農漁林業省 (AFFA)とする組織改定が行われた。 4.乳製品一元輸出に規制緩和の波(NZ) 現在、政府は、法律に基づくニュージーランド・デイリー・ボードの乳製品輸出に 関する一元管理について、規制緩和を検討している。政府の求めに応じて、11月 に酪農乳業界が提出した検討レポートでは、現在の国際情勢下では現状維持が最善 とし、いかなる改革においても、これまでの業界の財産を散逸しないこと、酪農家 を中心にした運営が行われることなどが大原則としている。一方で、2大酪農協が、 乳製品輸出に関して将来的な戦略的提携に合意するなど、規制緩和に向けた業界の 地ならしも進んでいる。乳製品輸出は国家の基幹産業でもあり、政治的な意向も強 く働くとみられ、今後の行方が注目される。 5.恵みの雨が洪水を発生(豪州) 昨年来、各地に厳しい干ばつ被害をもたらしていたエルニーニョ現象が本年5月 に終息したものの、今度はその反対のラニーニャ現象が出現したため、年の後半は 一転して全国的に記録的な降雨に見舞われた。ニューサウスウェールズ州の北部や ビクトリア州の東部では大規模な洪水が発生して穀物や酪農に大きな被害を及ぼし たほか、クイーンズランド州の南部でも肉牛の出荷がぬかるみで滞るなど、各地で 大雨の影響が報告された。ただし、全般的に見ると、干ばつの解消に伴って良好な 穀物・牧草生産に恵まれた地域が多くあり、特に肉牛生産者の生産拡大意欲が高ま ったと言われている。 6.豚肉業界の救済策を答申(豪州) 昨年末以降、カナダからの豚肉輸入の増加などを背景に、国内豚肉価格が過去最 低と言われる水準まで低落した。このため、政府は、今年6月、9百万豪ドル(6 億8千万円)の緊急国内対策(流通合理化補助等)を実施する一方、諮問機関であ る生産性委員会に、世界貿易機関(WTO)規則に基づく輸入セーフガード適用の 可否を諮問した。同委員会は、11月、当該措置の適用が可能であることを示唆す る一方で、これを実際に適用した場合の国際間の補償問題の発生や他品目の輸出へ の悪影響などを配慮し、生産・加工業者への補償や輸出促進などの施策を講じるこ とが望ましい旨を答申した。豚肉業界は、現在も関税によるセーフガードの実施を 要求しており、政府の今後の対応が注目されている。 7.再編進むと畜加工業界(豪州) 豪州のと畜加工業界では、近年、業界の再編、合理化が進展しており、と畜場の 減少が続いている。と畜処理能力の大規模化や、従来の業界横並びの労働条件では なく個別企業内で労使関係の改善を図る例もみられ、一頭当たり処理経費の格差は 企業間で拡大する傾向にある。その一方で、昨年来の世界的な経済動揺による輸出 需要の低下は、国際市場での販売競争の激化をもたらしており、生産効率の高い経 営へと集約化される傾向にある。と畜加工施設は、まだまだ過剰との指摘もあり、 業界再編は今後も続きそうだ。 8.港湾労働争議が農畜産物輸出に影響(豪州) 主要な港湾荷役企業であるパトリック社が、4月に労働組合員の大量解雇を発表 したことに端を発した労働争議は、全国の主要な貿易港で数ヵ月にわたって続き、 畜産物や穀物を含む輸出全般に多大な影響を及ぼした。組合側のストライキに対抗 し、企業側は、連邦政府や農業者団体の全面的な支持の下、豪州史上初めて非組合 員労働者による荷役作業を強行するなどしたが、連邦裁判の結果、組合員の大量解 雇は違法とされて敗訴した。しかし、企業側は、荷役作業人員の大幅削減などの譲 歩を組合側に認めさせたことから、諸外国に比して非効率的と言われる豪州の港湾 荷役の現状に、改善の一石を投じることができたと評価している。 9.98年肉牛飼養頭数、わずかに減少(豪州) 豪州統計局発表の98年3月31日時点の肉牛飼養頭数は、前年同期比0.5% とわずかに減少した。当初、98年に入ってからの雌牛と畜頭数が例年水準をかな り上回って推移していたことから、飼養頭数は、今回の調査を境に、80年代中盤 以降、初の減少局面に転じるとみられていた。しかしその後、ニューサウスウェー ルズ州など南部地域での雨不足の解消や、肉牛価格の上昇傾向などにより、生産者 の頭数拡大意欲が高まっているとされており、飼養頭数は、今後、ほぼ横ばいで推 移するとの見方が強い。 10.羊毛価格の記録的安値、肉牛生産・穀作にも影響か(豪州) 現在、羊毛価格は、大量の国内長期保管在庫と輸出不振により記録的な安値を続 けており、これを反映して羊の飼養頭数も大幅に減少しており、今後は、羊肉生産 や、羊との複合経営が多い肉用牛・穀物生産などにも、少なからず影響が及ぶとみ られている。11月末に開催された豪州羊毛研究販売促進機構(AWRAP)の年 次総会では、全国から参集した約1,400人の羊生産者が、生産者課徴金によって運 営されている同機構役員の不信任決議案を圧倒的賛成多数で可決したため、会長を 含む役員全員が即日解任された。
元のページに戻る