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98年の10大ニュース シンガポール駐在員事務所 【伊藤 憲一、外山 高士】


1.タイの鶏肉輸出、3四半期連続で大幅増加
  タイ鶏肉業界がまとめた98年各四半期の鶏肉輸出量は、第3四半期まで日本お
よびEU向けの大幅な増加に加え、アジア各国、中近東への輸出が増加したことに
より、連続して大幅な増加となった。しかし、今後の輸出は、一時期1米ドルに対
し40バーツを超えていた為替レートが最近では36バーツ台と回復基調にあり、
バーツの為替動向が大きなカギとみられる。

2.家畜への薬物使用の規制を強化(マレーシア)
  マレーシア保健省は、人体に有害な薬物が含まれた食肉を販売した業者に対する
罰則などを含む法律を改正した。保健省の調査において、販売されている豚肉のう
ちベータ・アゴニストなどの禁止薬物が検出されたものが39%もあり、生産段階
における薬物の違法な使用が問題となっていた。今後、消費者の食肉に対する安全
性への関心が高まるものと思われる。

3.香港へ輸出したタイ産豚肉に残留物質
  タイ産鶏肉からVRE(バンコマイシン耐性腸球菌)が検出された問題は記憶に
新しいが、今年11月、香港の公衆衛生当局が実施した食品検査で、タイ産豚肉に
残留物質が確認されたとの報道があった。中国産および地元産豚肉と比較して、バ
ーツの下落などによりかなり安価となっているタイ産豚肉は、経済的観念が強い香
港の消費者にとって、かなり魅力的なものとなっている。香港の消費者は、昨年末
の鳥インフルエンザ以降、病気、衛生面などに敏感になっているだけに、拡大して
いるタイ産豚肉の今後の輸出動向が注目される。

4.通貨下落で養鶏農家が困窮(インドネシア)
  インドネシアの養鶏農家では、通貨ルピアの下落により、97年第4四半期だけ
で少なくとも3千億ルピア(46億円:100ルピア=1.54円)に及ぶ大幅な
損失が発生している。輸入飼料の高騰が主な原因であるとみられているが、養鶏農
家のみならず、ひな生産農家までも巻き込まれる悪循環となっており、将来、鶏肉
の供給不足による価格の高騰が心配される事態となっている。

5.運用改善に動くフィリピンの豚肉輸入
  フィリピンは、昨年から豚肉の輸入制度の運用について、米国とWTO協定に基
づく2国間協議を行っているが、同国農業長官は、輸入制度の運用を大幅に変更す
ることを検討していると発表した。この背景には、温と体による流通が主流を占め
ている同国では、米国産冷凍豚肉は流通しにくいとみられることと、次期ラウンド
に向けてより有利な条件で臨みたい政府の事情があり、この2国間協議を長引かせ
るより、現行の輸入制度の運用変更で、この協議を乗り切きりたいとする政府の意
思の現れとの見方が強いようである。

6.タイ政府、生乳の最低取引価格を引き上げ
  タイ政府は、96年1月に設定した原料乳取引の下限価格となる最低取引価格
(目標価格)を、昨年7月からの通貨バーツの下落による輸入飼料の高騰の影響で、
農家の生産コストが上昇しているとして、政府が設定している標準的な品質である
生乳について、96年1月以来概ね2年ぶりに、1s当たり10.5バーツ(34
円:1バーツ=3.26円)から12.25〜12.5バーツ(40〜41円)に
引き上げることとした。

7.練乳などの国外持ち出しを禁止(マレーシア)
  マレーシア政府は、政府によって小売価格が決定されている価格統制品のうち、
練乳ほか3品目を国外に持ち出すことを禁止したと発表した。通貨下落に伴う輸入
原材料価格の上昇などにより供給不足を来していた上に、近隣諸国からの買い物客
が大量に購入して、国外に持ち出すなどの事態が発生したためとみられているが、
近隣諸国との関係を悪化させるものと懸念されている。

8.タイ、98年飼料輸入課徴金を引き下げ
  タイ政府は、昨年のバーツの下落による輸入価格の上昇により、窮地に陥ってい
る畜産業および飼料製造業の救済を図るため、98年から、飼料用原料のトウモロ
コシ、魚粉の輸入課徴金を廃止した。しかし、大豆ミールの関税率は、昨年15%
から5%まで引き下げられていたことから据え置かれた。業界は今回の措置は歓迎
するものの、関税の撤廃をも求めている。 

9.再建策を模索するインドネシアの酪農
  インドネシアの酪農は、通貨の大幅な下落による輸入乳製品の高騰で、牛乳価格
が大幅に値上がりするとともに、所得の目減りが消費量の減少に大きく影響し、深
刻な状況となっている。未曾有の経済危機で財政難に直面し、打ち出せる政策に限
度がある政府にとっては、日本を含めた各国の技術支援などを有効に活用すること
が長短期的にみても、酪農再生の最善策の一つとしている。

10.鶏卵の輸出市場拡大を模索(タイ)
  タイ政府は、中東や日本などへの鶏卵の輸出拡大を検討している。輸出の多くを
占める香港向けが好調である一方、今後、新たな輸出市場の拡大に取り組むことと
しているが、その背景には生産コストの上昇で困窮する鶏卵生産農家への救済対策
として、その効果を期待していることが挙げられる。


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