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【ブラッセル駐在員 池田 一樹 7月7日発】EU農相理事会は6月末、98年 度の農産物政策価格パッケージ案に合意した。これにより介入価格などの政策価格 が決定した他、雄牛特別奨励金のクオータの暫定的削減の延長、季節是正奨励金の 運用に当たっての特例措置、牛肉関連のPR活動へのEUの助成、動物愛護に関す る枠組みなどを決定した。 政策価格はEU委員会の提案通りの据え置きとなった。主な政策価格は次の通り である。 項目 価格(ECU/100kg) 生乳目標価格 30.98(約4千9百円) バター介入価格 328.20(約5万2千円) 脱脂粉乳介入価格 205.52(約3万2千円) 牛肉介入価格(R3) 347.50(約5万5千円) 豚肉基本価格 150.939(約2万4千円) めん羊肉基本価格 504.07(約7万9千円) *1ECU=157.4円 この他、理事会が決定した付帯市場関連措置などは次の通りである。 1 奨励金の交付上限頭数など 96年11月のEU農相理事会の合意により、牛肉市場の安定化を図るために実施 されてきた、97年と98年における、雄牛特別奨励金の交付頭数クオータの平均 20%削減、および繁殖雌牛奨励金の未使用頭数クオータの凍結措置を99年末まで 延長することを決定した。 また、雄牛特別奨励金のクオータについて、EU委員会は、各加盟国について実施 した調査(奨励金申請頭数がクオータを上回っているかどうかなど)を踏まえた結果、 スペインとポルトガルについては、増枠を提案していた。しかしながら、この提案に は反対国が多く、最終的に、両国に適用されるクオータは従前通りとされた。ただし、 共通農業政策 (CAP)の改革の一環として、引き続き検討が行われる。 この他、旧東ドイツの州(Lander)については、雄牛特別奨励金について定められ た申請上限頭数(90頭/戸)の適用が除外されているが、99年についてもこの除 外措置の延長を決定した。 2 季節是正奨励金 年間を通した肉牛と畜頭数の平準化を目的として、9月から11月の間の去勢牛の と畜頭数が年間去勢牛と畜頭数の35%を越える場合は、1月から6月の間にと 畜する去勢牛にEUが100%負担する奨励金が交付されている。アイルランドはこ の適用を受けてきたが、昨年の基準期間のと畜頭数が35%を下回ったため、今年の 奨励金は、EUが50%を負担、残りの50%を雄牛特別奨励金予算から負担する提 案がなされた。しかしながら、アイルランドの強い主張により、交付基準と畜頭数を 下回っても、 EUが100%負担することとなった。 3 牛肉の原産地表示などのPRへの助成 流通団体が行う牛の個体識別と牛肉の原産地表示制度の意義についての消費者への PRや牛肉の消費拡大PRに対して、EUがその経費の6割を上限(海外でのPRの 場合は8割を上限)として負担することとなった。 4 動物愛護 イギリス(議長国)の強い要望により、家畜全般の動物愛護について、不要な苦痛の 排除、定期的検査など極めて限定的ではあるものの、EU共通の枠組みが決定した。 現在、EUでは肉用子牛、集約的養豚および採卵鶏について動物愛護規則が定められ ているが、これら以外の畜種についても2000年から適用される。なお、追って畜 種別の細則を定めることとなった。 5 その他 EU委員会は、今年中に農産物の輸出振興に関する具体的な提案を行うこととなっ た。
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